磨硝子日記

すりがらすのブログ

ココ吉でカネコアヤノ『群れたち』を買う、下北沢をあるく、ロロ『BGM』を観る

チョコモナカジャンボをぜんぶ一気にたべたらさむくなってしまったので、タオルケットにくるまりながら、昨日のできごとをおもいだそうとおもう。

土曜日。雨をぎりぎりのところでもちこたえている空をみながら、あたらしく買ったギンガムチェックのワンピースを着てでかける。柴田聡子がアルバムのジャケットで着ていたワンピースみたいな、正真正銘ギンガムチェックのワンピースがほしいとおもいつづけて、吉祥寺のパルコでみつけたものだ。駅へむかってはしる。
コンバースははやくはしれるからすきだ。吉祥寺駅の公園口からバサラの前をとおって、ココ吉までこばしりでむかう。

ときどきツイッターのタイムラインをみる。だしぬけに「完売いたしました。Thanks!」とかながれてきたらどうしようとおもいながら、つるっと画面をスライドさせては、ココ吉のツイートがながれてこないのを確認して、またずんずんとすすむ。ココ池は瞬殺だったっぽいなと思いながら、またはしる。

カネコアヤノ『群れたち』の発売日。ココ吉で買いたいとおもっていたのに、ぼんやりしているうちに事前の予約をのがして、もうお店にでているぶんを買うしかなかったところに、矢島さんが走って買いにきてとツイートしていたから、これは走るほかない。

ココ吉とカネコアヤノちゃんといえばゴールデンウイークにインストアがあったな、お客さんいっぱいで、お店中にアヤノちゃんの声とギターの音が充満してはちきれそうだったよ。最高にかっこよかった。マリメッコの前をすぎて、ヴィレッジヴァンガードハンバーガー屋さんを横目に、左へまがる。坂道をおりて、駐車場から、窓のむこうのお店のなかをのぞく。

まだある。よかった。

のこり2枚のところで、なんとかまにあった。ココ吉さまたくさん入荷してくれてありがとうございます。
一目散に棚へむかって、ぱっと手にとる。ジャケがかわいい。そして、裏ジャケもかわいい。矢島さんがブログに書いていたのこれのことか。あーアヤノちゃんここにいる。ひー。
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それからお店のなかをぐるぐるして(『恋と退屈』単行本あったよ)、7インチの壁に原田知世『彼と彼女のソネット』をみつける。んがわいい。白い肌に、透きとおるブルーのアイシャドウ、小さな口にひかれたオレンジのルージュ、やや太めのぼさっとした眉、大きなヘッドドレスと髪型が顔のちいささをわからせる、ココ吉の壁の美少女をみつけまして、矢島さんの字をよんで、しゃっと引きぬく。
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70年代とか80年代のジャケのメイク、攻めててかわいいなとおもう。『Seiko-Train』のメイクなんて、めちゃくちゃクールでかっこいいし、『OLIVE』のキャットライン(長めに描いたはねあげアイライン)とピンクのリップなんていまの女の子たちもしているんじゃなかろうか(ドレスと帽子のドットも今年っぽいし、『OLIVE』の文字のピンクと背景の緑色のあわせも最高におしゃれ!)。

SEIKO-TRAIN

SEIKO-TRAIN

OLIVE

OLIVE

ちなみにわたしはどちらかというとLPとか大きいレコードを買うことがおおいけれど、矢島さんの解説みて、いいないいなとおもって7インチ買ってみた。ココ吉へいくと無意識に矢島さんの字を探している(気がする)。愛と信頼、矢島さんの解説。


ココ吉をでて井の頭線の各駅停車へのる。途中で急行に乗り換えてむかうは、下北沢。たのしみにしていたロロ『BGM』を観るためだ。
まだまだ時間があったので、CCCの上のカレー屋さんでチキンカレー定食をたべる。たべおわるころに「サンマのフィッシュカレー」に気づいた。また今度いこう。

線路の近くをあるいていると、大学生の男の子と女の子に話しかけられる。最近のいわゆる<若者のレコード人気>についてゼミで研究しているのらしい。ココ吉の袋をもっているのをみて、話しかけたとのこと。レコードのどういうところがすきですか、とか訊かれて「うーん、さわれるところ?」とつまらないことしかいえなくて申し訳なくなる。
でも答えてみて、みんな手でさわれるものを探してるんじゃないか、とふとおもう。矢島さんが『ADAWHO』のインタビューで「うちにレコードを買いにくるお客さんはフィルムカメラを持っている率が高い」と言っていたのを思いだして、配信とかSNSの恩恵をどこかでは受けつつも、なにか実体のある、手でさわって確かめられるものがやっぱり安心する、自分にあっている、根拠になるとおもう、そういう気持ちを、レコードや紙の本をすきな人たちはもっているのかなとおもったりする。彼らの研究結果、どこかでみられたらいいのにな。

それから古書ビビビでZINEとユリイカ 特集『あたらしい短歌、ここにあります』を買い、喫茶店でアイスコーヒーとチーズケーキをたのんで、さっそくユリイカを読む。歌人 穂村弘(通称「ほむほむ」)と詩人 最果タヒの対談をよんだあと、スカート澤部渡氏の短歌をよむ。日常へのまなざし、気づきをするどくきりとる、ほんとうにすごい人だなとおもう。

喫茶店をでると、雨はまだふるのかふらないのか腹をきめかねていた。東洋百貨店で、丈の長いコートをみつけて試着する。肩幅がないのでコートを選ぶのはほんとうに慎重になるけれど、店員さんと一緒に何着かコートをはおるうちに、これがほしいな、という1着をみつけて、さんざんに悩んで買う。


それからとうとう18時30分をすぎて、雨が夜空から垂れるひとつづきの糸のようにふりだす。ザ・スズナリへ。
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ワンピースのすそをふんづけないように気をつけて階段をのぼる。あっというまに客席は埋まり、満員御礼。
そこからはもう、なんというかみずみずしくてどきどきっぱなしだった。もうもどれない日々が、いつでも誰にとってもこんなにまぶしくて、いまとなってはくるしくて切ないのはどうして?そして、最近の毎日が、ありふれた陳腐なことのくりかえしに思えるのはなぜ?でもそこはロロマジック。青春のはかなさを、ポップであかるくすがすがしい群像劇へと昇華させるとともに、日常と地続きのところにドラマがあることを教えてくれる。江本祐介の音楽、いつも聴いているけれどやっぱり最高だ。まだまだつづくツアー、応援しています。

帰り道はロロの余韻で夢見心地、ふわふわと家へ着き、さっそくカネコアヤノのレコードをめりめり開ける。ジャケのマットなさわり心地、歌詞カードの写真、盤面のラベルにまで写真が入っていて、インナースリーブの内側にビニールがしっかり貼りつけてあるという、細部にまでこだわりをつくしたのがつたわってくる、手のこんだ仕様で感激。愛の結晶とでもいうべきか。
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聴いてみると、ああいいな、と思うひびき。アヤノちゃんの声、やっぱり林さんのギターいいな。1日あるきまわったからだにぐんぐんしみこむ。
B面の『やさしい生活』、アヤノちゃんの女性と少女をいったりきたりする歌詞、すきな子のひとり暮らしの部屋を、あるいは心のなかをふとのぞくような、いけないことをしているようなきもち、でもほんとうのほんとうのことは見せてくれるのかくれないのかわからない彼女、わからないわからない、そういう妄想さえもかきたてるような、匂いたつ彼女の色気に、わたしたちはとらわれているのではなかろうか。

カネコアヤノ『やさしい生活』

連休の今日だって、いつもどおりすぎていく1日と同じ、だけれど今日のことを、いつかおもいだしたり、わすれたりするのかな。このさきのことは今日と地続きなのだから、今日をがんばろう、そういう月並みなことをおもって寝た。

先週のこと

もうだいぶまえのことのようにおもえるけれど、先週、出張で静岡へいった。ひさしぶりの静岡、1日目はさくさくとおわり、上司はわたしをおいて帰京。2日目はひとりでむうむうとパソコンをみつめながら仕事をして、夕方には東京へかえってくるという、最近ではめずらしい、余裕のある出張だった。

初日に上司が帰ってしまったので、さてどうしよう、と考えたときにおもいつくのは、炭焼きレストラン さわやか。みんなたべている、さわやか。
ホテルですこし仮眠をとってから(気づいたら1時間半もぐうぐうねていた)、むっくり起きあがって、うしうしとローカル線の駅へむかい、ホームをまちがえ、次の電車は20分後で、改札の前のベンチにすわって、制服を着た高校生ぐらいの男の子と女の子が会話するのをながめていた。すずしい夜だったのでよけいに、うらやましいなとおもった。がんばれ野球部。

なんだかちいさい冒険みたいだった。出張おわりで、ホテルをぬけだして、ひとりで夜の冒険。ローカル線が町をあかるいライトで照らしながらがたごとすすむ。真っ暗な空と、ぽつぽつみえる灯り。駅のホームにとんと降りれば、はじめてふれるつめたい空気や、しずかさ、ホーム下の土や雑草の匂い。むこうにみえる「炭焼き」のネオン。

わたしもきちゃったよ、さわやか。まずはコーラ(とポテト)でカンパイです。ぷは。「カンパイドリンク」が100円(税抜)という超良心価格で感激した。これだけでさわやかにまた来たいよ。
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そして、でた、げんこつハンバーグ・・・!(じゅるる)
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黒々とひかる牛さんがどしっとすわった鉄板がかわゆい。

帰りの道は、ひたすらに「おいしかった、おいしかった」とつぶやきながら歩いた。夜のひとりのさみしさは、満腹でかんたんに埋めあわせられた。帰りの電車の窓に、顔がてかてかのわたしが映った。おなかがいっぱいでほくほくした顔と、いつも東京で着ている仕事用の服がすごくつりあっていないようにみえた。つかれていたけど胸がどきどきして、ホテルにかえるだけなのに揚々と歩いた。さわやかのことをツイートしたら友達がいいねしてくれて、そこから少しLINEをした。元気そうで安心した。その夜はまたぐうぐう寝た。

2日目、昼過ぎには仕事をおえて、すこし早いなとおもいながらグミを買ってこだまへ乗った。
もう夏はおわったなとおもいつつ、車窓から景色をぼんやり流しみながらHi,how are you?の『さまぁ~ぎふと』を聴いていたら、『メロン』の「君のことなんてわかりっこないけど 君のことばっか好きだ」という歌詞が、油断した胸にとすっと突きささって抜けなくなってしまった。反芻すればするほど、かえしのある棘のように深くはいりこんでしまってくるしくて、そのまま目をぎゅっとつぶった。わたしはこういう曲をいま、誰のことを考えながら聴いているのだろうかと、はたと考えて、思いうかぶすきな人の顔が、しゅわしゅわとうすく記憶から消えかかっていくのをみた。遠くにみえる、わたしと関係のない景色が、わたしがひとりであることをわからせて、ピアニカの音が細くなるとともに、潮がさーっと引いていくように、いろいろなことから目がさめるような気がした。

さまぁ~ギフト

さまぁ~ギフト


こだまとはいえ新幹線はあっというまに東京駅に着き、読むつもりで持っていっていた益田ミリの『今日の人生』は、バッグのなかからスーツケースのポケットへ移動させただけでぜんぜん読まなかった。帰ってきてから病院の待合室で読んだら、なんというか平板にみえることがぐっと奥行きをもったものにみえてきた。

今日の人生

今日の人生

そういえば出張のときに新幹線が止まってしまって、新神戸で何時間か待ちぼうけしたことがあって、その時駅のセブンイレブンで買ったのが益田ミリの『ちょっとそこまで旅してみよう』だった。電車がうごかないときに旅行の本をよむというのは、まあいまは止まってるんだけどね、とか思ってしまうけど、益田ミリの日常から非日常をのぞくまなざしがよいと思った。ちなみに読破しても電車はうごかず。


このあいだ久しぶりにココ池に行ったら、中川さんがブログ読んでますよ、といってくださって、めちゃめちゃにはずかしかった。スピッツの『名前をつけてやる』を買った。
f:id:slglssss:20170915003910j:plainこの猫がうちにくる日がくるとは思ってもみなかったな。

ココ池、お店のなかがオレンジ色の光で充満していてあたたかいきもちになるし、雑貨とかZINEとかかわいいし、いつもいい匂いがするからすきだ。すこし行かないあいだに、というか毎日どんどん移りかわっていて、季節のようだなとおもった。

9月のこと

9月は山吹色。aikoが『夏服』のジャケで着ている服の色。

相変らずむし暑くて眠れない夜だと思っていたのにぐんとすずしい。いそいで長袖をさがして着た。とみにベロア素材や光沢のある服が気になりはじめて、それから吉祥寺の駅前の果物屋さんでおいしそうなはりはりのぶどうをみつける。口のなかでぱりっと皮がはじけてじゅわっと果汁がでてくるのを想像する。いま冷蔵庫にはぶどうがはいっている。


土曜日、パルコブックセンターで本を買う。
最果タヒさんの新刊『愛の縫い目はここ』、これはすばらしいものだとわかった。繊細に編まれた一篇一篇、息をぶうっと吹きかければばらばらと崩れてしまいそうなほど絶妙なバランスでなりたっているようにみえて、大きなエネルギーをたたえて紙の上にどんといる。十分に余白をとった白いページの上に、吐息のようにやわらかく、針のように胸をさす言葉のつらなり。詩を読むときに、詩のまわりが真っ白というのがなにかとても大切だと思った。なにもなくて無音、そこで響く、はだかの言葉たち。ほんとうにうつくしい一冊だった。『海』と『スクールゾーン』が特にすきだ。

愛の縫い目はここ

愛の縫い目はここ

ちなみに縦書きは明朝体、横書きはゴシック体、文字割りもいろいろでおもしろい。表紙の細い糸がからみあうような絵や色使いがとてもかわいく、シュリンクがかかっていて中身がみられなかったけれどぱっと買ったのは、装丁がかわいかったからだ。すてきな装丁の本に出会うと、ああ、やっぱりわたしは紙がすきで、本がすきで、さわれるものがすきだなあと思う。あとで知ったけれど、このブックデザイナーは佐々木俊さん、ロロ『BGM』のフライヤーをデザインしている方で、なんだか世の中というのはつながっているなと感じた。


ロロ『BGM』といえば、東京公演をとてもたのしみにしている。『サマーバケーション』、ロロのメンバーの歌声がかわいいし、江本くん節が全開で、本番が待ち遠しい。
soundcloud.com
もてスリム氏による三浦さんと江本くんのフィールドワークレポート、何度読んでも、なんだか不思議な物語のようだなと思ってしまう。カーナビに導かれて遠回りした先で一面の菜の花畑にたどりついたとか、三浦さんが住んでいた団地に行ったとか、ハイハワ原田さんと錦鯉の品評会に行ったとか、三浦さんが柴田聡子の『後悔』みたいなMVを撮ったとか、どれもよくできすぎていると思うくらいだ。6日間東北を巡ったフィールドワークレポートをつうじて、もてスリム氏は

きちんと計画を決めないまま始まったフィールドワークだったが意外とどうにかなるもので、誰かの記憶を辿るような毎日が続いている。誰かの話を聞きながらその土地を巡るというのは普通のことのようでありながら不思議なことでもあって、薄っすらとお互いの記憶をシェアして混ぜ合わせているような感覚が生まれるのだ。

と振り返っている。

わたしたち、しらない誰かの記憶について、しったような気持ちでうれしいとかかなしいとか思ったりするし、誰かの記憶が自分の記憶と混ざりあっていくとき、その人のことをすこしわかったような気持ちになる。ほんとうはわかりあえることもないのかもしれないけれど、でも記憶を共有しているということが、わたしたちを橋渡しして、今日もつながっている。

劇中で使われる音楽は江本くんが作曲していて、最近は小杉湯のライブでよく歌っている『海に着く前』がとてもすきだ。
youtu.be
小杉湯では江本くんがひとりで歌っているけれど、これは三浦さんと江本くんが掛け合いで歌っている曲。

「ねえ、いますぐいい音楽を作ろう」

「だったら海を目指さなくちゃ 海を目指す歌はどれもキラーチューンだってしってる?」

「海にたどりついちゃいけないの?」

「海にたどりつくまえの、その直前をうたわなくちゃダメだよ」


それから、ぼくたちは、ギターと陽気だけしかもたないで、1番近くの海をめざして走り出してゆく


「あ、海がみえてきた!」


「って君がいった瞬間にほんとうにキラーチューンは生まれた」

フィールドワークレポートによると、山形県の旧県庁舎である文翔館の前でつくられたらしい。つぶやくようなふたりの歌声、ぽつぽつ会話をしているのを横で聞いているみたいな気持ちにさせられる。「海に着く前のことを歌った曲は大体名曲説」という江本くんの主張、笑ってしまったよ。ちなみにもう1曲公開された『夜の雨に流れる歌』、にやにやした。やられた。
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正直なところまだまだじゅくじゅくとした気持ちでいて、夏は暑くてすきじゃないけれど、暑さのあとの涼しい風はとてもすきだった。去年は10月に京都に行ったときでさえまだ夏のような気がしていたのに、もう今は、べたべたした気持ちを思いだせない。髪が少しずつ伸びる、つるべ落としの秋の始まり。

処暑をすぎても

暑い日はつづく。
あんまり暑いので、髪を切った。全体は伸ばそうと思っているので、前髪と、後頭部のたくさん髪をたくわえているところだけ。

髪を伸ばしながら切るって、もう字面だけでも矛盾があるけれど、美容師さん的にも悩ましいのらしい。あんまり切ると全体が伸びていかないし、かといってただ美容室にいかずにほったらかしで伸ばしておけばいいというわけでもない。とくにわたしのようにマッシュヘアにしていると、すこし伸びただけで全体のデッサンがくるってしまうのだそうだ。なので、1か月に1度美容室へいっては「伸ばしたいのです、切ってください」というとんちを披露して、それであっても美容師さんは、みごとに伸ばしていくときに都合がいいよう余計に伸びてしまっているところだけ切って整えてくれて、結果的に髪の毛はだんだんどんどん伸びてきているというあんばいである。すごいなあ。

そんなわけで涼しくなった襟足でふらふらと街へ出る。
台風クラブはものすごい勢いで吹きぬけていった。台風一過の青空というよりも、ぐるぐると大きな渦に巻きこまれて心をかき乱されたあとの呆然という感じではなかろうか。痛快も痛快だ。今年下北沢THREEではじめて目の前で観たときに、とにかくココ吉矢島さんに感謝したいと思ったのだった。あの日は5月だったのにべたべたに暑くて不思議な夜だった。新曲です、と披露された曲はアルバムに収録された『春は昔』。

台風クラブ/春は昔

歩き続けているとくたびれるので、西武へ入ってひとやすみ。週末はどこの店もいっぱいだけれど、昨日はカウンターに通してもらえて運がよかった。クリームソーダ、アイスがたくさんのっていてときめく。アイスで冷やされたソーダがしゃりしゃりとシャーベットになっておいしい。
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新宿は、誰かに会えそうで誰にも会えない街。
これだけたくさん人が歩いているのだから、学生時代の友達とか、会社の同僚とか、ひとりくらい会えそうなものなのに、誰にも会ったことはない。
学生のとき、卒業式のあとカラオケへいった帰り、細い路地で「またね~」と手を振って別れた友達に、それから1度も会っていないことを、折にふれて思い出す。彼女たちがいまどこでなにをしているのか、なにも知らない。彼女たちに手を振ったあのときまで、わたしたちはすくなくとも学生生活の記憶を一にしていたのに、踵をかえしたときから、もう彼女たちとわたしのなかに同じ記憶はつくられていかない。そんなことをわからずに、わたしは背をむけて歩きだしてしまった。
西武のカウンター席から往来を見おろす。知りあいは通らなかった。

渋谷へむかう。タワレコ5階のパイドパイパーハウスへ。
ちょうど『TIN PAN ALLEY メモラビリア』の展示があり、貴重なフライヤーなどをじっと見つめたりしたのだけれど、写真をとるのをわすれた。どれもいい匂いをたきしめていそうだった。
それから『はっぴいえんど』のカセットをみつけて、これもカセットがあるのかとおどろく。『風街ろまん』もあるみたい。
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はっぴいえんど 完全限定生産

はっぴいえんど 完全限定生産

風街ろまん 完全限定生産

風街ろまん 完全限定生産

最近カセットを聴く。子どものころ、風邪をひくと母が枕もとで偉人にまつわる物語のカセットをながしてくれた。ジェンナーが天然痘のワクチンを発明した、とか、キュリー夫人ノーベル賞をとったとか、そういう話。やわらかい女性の声と、よくひびく男性の声をおぼえている。しかしながら熱におかされた頭で長いあいだ聴いているうちに、だんだんと耳の奥でナレーターの声がぐわぐわとひびくようになって、こわくなってしまって以来、カセットは聴いていなかった。

それからもう20年あまり経っただろうか。Hi,how are you? 原田さんとシャムキャッツ夏目くんのライブで、COFFEE AND CASSETTESの森さんにお会いした。大貫妙子さんの『SUNSHOWER』はカセットで聴くのがいいですよ、と教えてもらって、ココ池で買って帰ったのがきっかけで、わたしはカセットを聴くようになった。
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久しぶりに聴いたカセットからでてくる音は、ぽこぽことかわいくて、あたたかかった。大人になって聴いてみると、カセットというのは、まるでラジカセのなかで歌っているような、この響きがよいのだな、と思った。そして、子どものころはこれがすこしこわかったのだということもわかった。

レコードを聴くようになってから、音楽にはいろいろな聴き方があるなと思うようになった。もっぱらiPhoneで聴くばかりだったけれど、レコードを聴くときにはスピーカーの前にすわって、部屋中に音が充満するのをたしかめながら、大きなジャケットをながめたり、歌詞カードをすみずみまでさわったりする。このことはほんとうにみずみずしくうれしくて、今でも新しくレコードを買うと、うきうきと針を落として、音が鳴るまでの空隙に息をとめる。

カセットは、部屋中に音がぶわーっと広がるというよりは、目の前で演奏しているかのようなこぢんまりさがかわいい。まずもってモノが手のひらサイズなのがかわいい。プレイヤーもメカメカしいのから丸っこくてかわいいのや、キャラクターものまであってかわいいし、操作方法もおおらかだ。ボタンをがっしゃんこ!と押してテープがきゅるきゅる回りだせば、半径1メートルの世界は、音楽にちゃぽんと浸かる。

カセットに目をむけるようになってからは、ひとつのアルバムをいろいろな媒体で聴くのがおもしろいなと思う。同じ曲の響き方を、CDとカセットで確かめたり、CDとレコードで聴きくらべたりする。カセット「で」聴くことがおもしろいなんて、しらなかった。カセットのよさに出会えてうれしい。

最近、森さんはカセットのほかにプレイヤーの販売もされていて、先日マリークワントの(森さん曰く)珍品、カセットウォークマンを買わせていただいた。
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届くやいなやめりめり開けたら、カーペンターズベストのカセットが入っていて感激した。山下達郎がすきですって言っただけなのに。柴田さんのライブでいつもカーペンターズのアルバムかかっているからずっとレコード屋さんで探していたけれど、たくさんありすぎてどれを買っていいかわからないから迷っていたのだ。それを知っていたのかと思うようなすばらしいチョイスで、秋田へむかって手をふった。
ご覧のとおりのすけすけで、マリクワのお花のマークがどんとデザインされた、マリクワこんなこともしてるのか的な逸品。うしうしと電池をいれて聴いてみたら、カレンの声がやさしく聴こえてきて、ごぼごぼ泣いてしまった。胸がいっぱいになった。

会わなくなった人たちとつむいできた記憶と、こうしてあたらしく出会う人と編んでいくこれからのことを想って、それでもまだわたしはかすみ目で、手を離したり結んだりして、今日もぼんやり歩いている。森さんありがとうございます、またお会いできたらうれしいです。

1983『golden hour』のこと

先日、高円寺の銭湯 小杉湯にてEMC江本くんが毎月開催しているライブに行ったときにはじめて観た1983(読み方は「イチキュウハチサン」)という5人組バンドが大変すばらしかったので、物販にて、ちょうど1年前に発売された2ndアルバム『golden hour』を買った。
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これがいまさらながら、最高にすばらしい。どうしてもっとはやく気づかなかったんだ、時間を巻きもどして聴きたい、そう思うくらいの大名盤だ。

昨年末に神保町試聴室で開催された『年末木霊まつり』*1で、新間功人氏(ベースとボーカル)、関信洋氏(ギターとボーカル)、谷口雄氏(鍵盤とコーラス)による演奏が終始ほんとうにかっこよく、ミュージシャンてすごい・・・!と思ったのだけど、いま思えばあれは1983に出会うための伏線だったのか。

まず、1曲目の『文化の日』。

1983 『文化の日』 (Official Music Video)
関氏の柔らかくてやさしい、はりのある声が心地よく、それに重なる中盤からの、芯のある松村拓海氏のフルートと高橋三太氏のトランペットの綾なす旋律がうつくしい。
リテラリーな歌詞も印象的で、たとえばこの部分、情景があざやかにうかぶ描写。

赤い車が路地を 駆け抜けて
強いどしゃぶりの雨が
遅い秋に降り過ぎる

車の赤い色がそれほど広くもない路地を残像をのこしながら走り去ったあと、空が暗くなって、強い通り雨が町を洗ってゆく、秋の日。そんなふうに思った。1曲目から大名曲。

つづいて『サマーミラージュ』。
soundcloud.comはあ心地よい。夏の抜けるような高い空の下ですずしい風に吹かれたような、さわやかさ。シンセとフルート、トランペットのメロディアスな演奏がはなやかでうきうきする。小林うてな氏のかっちょいいコーラスも最高で、思わず体をゆらしたくなる。

それから個人的にとてもすきだったのが、新間氏ボーカルの『レームダック』。横浜の街の風景がちりばめられた歌詞と、細野晴臣を彷彿とさせるエキゾチックなサウンド、新間氏のセクシーな歌声。はじめて聴いたとき、どきどきして震えた。ああすきだなと思った。北京ダックならぬ、レームダックなんだね。
もう1曲、『エメラルド・シティ』も新間氏のすこしかすれた声が最高なミディアムナンバーでおすすめ。

ほかにも、夏の涼しい夜に聴きたい、関氏のファルセットがキリンジ感たっぷりのメロウなナンバー『feelin』、関氏の高音冴えわたるボーカルとポニーのヒサミツ氏、yunniko氏のコーラスの重なりがたまらない『ロデオの新恋人』、ボーカルに平賀さち枝氏が参加するなど豪華メンバー大集合、ホーンセクションが大充実で、豊かな音がぎゅうぎゅう詰まった『Windy(Album ver.)』、谷口氏のやさしくあまやかな歌声がすてきな『12AM』、パーカッションに増村和彦氏(ex.森は生きている)をむかえてパライソへ漕ぎだす『アフリカン・グラフィティ』。どれを聴いてもとても心地よい。

1983「Windy/ジョンルウ (外灘行進曲ver.)」short ver.
(『Windy』は後半。こちらはSingle ver.)
この『Windy/ジョンルウ』の動画をみてもわかるように、1983の魅力は音楽だけにとどまらない。とにかくメンバーがたのしそうなところ、これもわたしが1983をすきな理由だ。このあいだの小杉湯のライブでも、MCのたびにニコニコと顔を見あわせて話し、大きな声で笑っていて、演奏がはじまってもほんとうにたのしそうに、心躍る音ばかりを奏でていて、とても好感をもった。
こういうメンバーの「ネアカ感」、これはアルバムにも通じていて、かろやかで豊かなサウンドにも存分にあらわれている。だから聴いているわたしたちも、胸のなかに新鮮な風が吹きこむような心地よさを感じるのだと思う。1983の魅力の真髄は、この「ネアカ感」なんじゃないだろか。

というわけで、もう夏も終わりだけれど、まだまだ間にあうから、みなさん1983聴いたほうがいいですよ。今度あだち麗三郎氏とカレー屋さんでライブするらしいです。

golden hour

golden hour

www.the1983band.com

*1:井手健介氏主催。井手健介と母船、1983など東京のインディーシーンを代表する豪華メンバーによる演奏をバックに、ミュージシャンたちがカラオケを披露するライブ。原曲へのリスペクトをびしびし感じる再現度高すぎの演奏と、ゆるい雰囲気の調和が最高。井手氏が定期開催している神保町試聴室のライブ『木霊でしょうか』の年末特大版。『golden hour』でコーラスを担当しているYankaNoi yunniko氏、フルートの山本紗織氏、1983のアーティスト写真を撮影したMei Ehara氏も参加。

お盆のこと

先日書いたブログを読み返していたら、なんかすごく、長いこと書いてるな、と思い、これからはなるだけさらっと書こうと思います。

今年のお盆はふつうの日から地続きで、ずっと現実にいるまますごすことができた。遠くへも行かなかった。

11日、小杉湯とTraffic。岡村ちゃんが最高だった。公式サイトをみたら秋冬ツアーの先行受付中だったので申しこんだ。いつもライブはわりと後ろのほうで観ているけれど、チケットがあたったら、今度こそ前のほうで岡村ちゃんを観たい。

12日、吉祥寺でレコードを買ったり、カレーを食べたりした。久しぶりにユニオンへ行った。f:id:slglssss:20170816004340j:plainお昼の元気なうちなら体力もまだあって、けっこうたくさん棚をみられると学んだ。高中正義の『T-WAVE』とTUBEの『THE SEASON IN THE SUN』と南佳孝の『12 Lines』を買って、頭のなかが海になっているなと気づく。海なんて行かないくせに、日焼けなんてきらいなくせに、夏なんて嫌いだと思っていたのに、なんでか、こういうものをあつめてしまう。岡村ちゃんの『ビバナミダ』を見つけて、そっと棚に戻す。ジャケがかっこよかったからほしかった。
それからココ吉へ行って、バービーの『LISTEN! BARBEE BOYS 4』を買う。バービーボーイズは中学生のころからすきなのだけど、それを書くと長くなるので思いだしたら書くことにして、とにかくいつ聴いてもコンタさんがかっこいいなと思う。そういえばココ吉にフィンガー5が2枚あって、どっちもジャケがばつぐんですごくそそられた。まだあったら買いたいな。

13日と14日、ずっと寝ていた。競歩をみていたら、日本代表の3選手はえらくいい人そうで、メダルをとってもおごらず、にこにこと愛想よくインタビューにこたえていて、応援してくれたお父さんにお礼まで言って、人間として大切なことはこれだな、と思った。ボルトが走りきれなくて、かなしかった。
それから部屋の掃除をした。レコードとCDがたくさんあって、正直もうしまいきれないのだった。わたしの部屋は、突然堰を切ったようにあつめだしたレコードに対応していなくて、とにかくだんだんどんどん、レコードをしまう場所がなくなって、それなのにまた買ってしまって聴いては、やっぱりいいな、おおきいジャケットはすてきだなと思うから、また買いにいってしまうのだった(高中正義氏のレコードは円盤のまんなかに猫がいた。猫がぐるぐるまわるのをながめていた)。
家にいるとたいくつなのでパクチー料理を作った。ナンプラーを使いこなすというどうでもいい特技を身につけてしまった。根っこをざっくり切りおとしたあとは、水をはったコップに入れて、次の日に庭のプランターに埋めた。すこし葉っぱがでてきた。のちにふと気づいたけれどこれ、『百万円と苦虫女』で森山未來演じる中島くんもやっていたな(中島くんはネギ)とか思いだすけれど、いや、でもわたしが育てているのはパクチーだし、とかふてくされて、また寝た。

15日、雑誌に載っていたヴィンテージショップへ洋服を買いにいく。大学生のころから古着はだいすきだ。吉祥寺のフラミンゴはほとんど通学路にふくんでいたくらいのいきおいで、仲よくしていた店員さんとよくよく古着の話で盛りあがっていたな、などと思いだす。今日はすてきな柄のブラウスを買った。
雨がやまなくて、ワンピースのすそを濡らしながら歩いた。家に帰ってきて、1983を聴く。ゆたかな音がたくさんつまっていて、とてもすきだと思った。今度のカレー屋さんのライブに行きたいな。

『シャムキャッツ×ミツメ』、小杉湯のフォークバンケット、cero presents 『Traffic』のこと

きのう久しぶり(※2週間ぶり)にココ吉へいきましたらミツメの『A Long Day』がながれてきて、そうだわたし、こないだの『シャムキャッツ×ミツメ』に行ったのだったと思いかえした。


先手のおシャムはアルバムの曲を中心に、すごくかっこいい演奏だった。とにかくそぎ落とされた感じだな、と思いつつ、わたしは木造の一軒家の建築現場を思いうかべていた。いい香りのする太い木の柱がむき出しになっている、家の骨組みが見えているあの状態。たぶん菅原さんがMikikiのインタビューでいまのシャムキャッツのことを建築にたとえて言っていたのをおぼえていて、それから連想したのだと思う。

菅原「今回、アンサンブルを作っていくうえでのテーマは、オーヴァーダビングをしないということ。だから、演奏している様子が見える作品になっていると思います。そのぶん、個々のプレイヤーのクセがめちゃくちゃ出ていて、ぱっと見は柱が1本立っているだけに思えても、凝視すると〈この釘の打ち方、めっちゃ独特だわ〉〈このニス塗りはこだわっているな〉とかそういう感じ(笑)。

シャムキャッツのライブは何度でも見にいくけれど、毎回違った発見があってたのしい。いまの『GIRL AT THE BUS STOP』や『MODELS』はより一層力強くて骨太な演奏でぐっとくる。いつも新しいことをしつづけていてほんとうに尊敬する。ツアーたのしみだな。

後手のミツメ。ライブでみるのは武蔵大学の学園祭ぶりだったけど、やっぱりかっこいい。川辺さんの声は、あらかじめ用意されている言葉のひとつひとつを残さずていねいにくりぬいていくようで気持ちがいい。あと前髪のカットラインがいつもととのっていてすてきだ。この日はセットリストも出血大サービスで、新曲も2曲もあってよかった。

思えば、わたしがいまのように音楽に親しみはじめたとき、最初に聴いたのはミツメとシャムキャッツだった。はじめて聴いたはずなのに、どれもすきだと思ったのがとても不思議だった。どうしてだろう。まあ、そのときにすきだと思ったから、いまもずっと聴いているのだろうと思うけれど。
ミツメとシャムキャッツに関していえば、ライブへ行っても普段CDやレコードで聴くときにも、いつも、最初の出会いのことを思いだしている。真夏の蒸し暑い夜、バイト先からくたくたで帰るバスのなかで、ミツメを聴いていたこと。ミツメを聴くと大学時代のバイト先でのできごとをほんとうによく思いだせる。のちに行ったWWWXのワンマンで、最後に『Disco』でミラーボールが回りだして、目の前がきらきらと光って、うつくしかったこと。そういうことを、どうしても忘れられないし、思いだしてしまう。いつまでもいつまでも、そういう頭でいて、わたしは一歩も先にすすめずにずっとひとりで、ぐるぐる同じところを回っている。言いようのない情けなさでいっぱいになって、雨の降る恵比寿の街を足早に歩いて帰った。



8月になる。
また出張のせいで、柴田聡子のライブに行けなかった。もうなんというか、縁がないのだろうかと、落ちこんだ。日ごろの行いがわるいのだろうかと、反省した。
それからはとにかく、仕事のことだけ考えて、朝から晩まではたらいた。仕事のことを考えていると、ほかのことを考えなくてすんで、楽になった。体調をすこしくずした。


お盆休み。11日、まずは高円寺、小杉湯へ向かう。ここ最近は毎回行っているEMC江本くん主催のフォークバンケット。今回のお相手は1983。
駅前を歩いているときに前から1983の面々が歩いてくるのをちらと見かけて、小杉湯へ着いて男湯をうろうろしていたら、谷口さんから「こんにちは、さっき高円寺の街で見ましたよ」と声をかけられて急にはずかしくなる。
先手、江本くん。ロロの三浦さんと一緒に作った曲、どれもいいなと思う。海に出る直前のことを歌っている曲、あの曲はなんというか、新幹線に乗っていてもうすぐ富士山がみえるとか、江ノ電にのっていて、あとすこしで目の前がぜんぶ海になるな、とかそういうときの、うきうきたのしみにするきもちに似ているなと思った。実際、海がみえると、おー海だなー、ぐらいにしか思わないもので、きっとその直前の、うきうきする気持ちを歌わなくちゃっていうのが、あの曲なのかな、と思っている。そういうところを掬いとっている江本くんはすごいと思う。
あとドラマ『デリバリーお姉さん』でカネコアヤノちゃんが小杉湯のことを歌ったという曲、「湯気から雲 あたしたち」とはじまるのだけど、「わたし」じゃなくて「あたし」といっているのがとてもすきだと気づいた。いい意味でちょっとませてる、生意気な感じがよいと思いませんか。それをまた、江本くんが「あたしたち~」と歌うのが、すごくよかった。男性ミュージシャンが、女性の言葉で歌うのって、とてもどきどきする。
後手、1983。それぞれのメンバーのライブには行っていたけれど、1983としてライブで観るのはじめてだった。
とにかくたのしそうに演奏しているところを観ていると、こちらまでいい気持ちになる。銭湯のあたたかくてゆるい雰囲気にとても合う演奏、すばらしすぎて物販でアルバム2枚買ってしまった。最後に江本くんと1983で『ライトブルー』の大合奏、すごくよかった。


小杉湯へ行ったあとは急いで新木場へ移動して、ceroの『Traffic』だ。なんといっても、今年の目玉は岡村ちゃんこと岡村靖幸である。
最近岡村ちゃんのツアーへ行くようになってから一層岡村ちゃんのことをすきになって、今回も出演が決まったときに、ほとんど反射神経でチケットを買った。
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会場へ着くととにかく人がすごくて、久しぶりに、こんなに人の多いところへきたものだと思う。ピーチマークのついたTシャツや帽子を身につけている人がたくさんいて、心づよい。思えばわたし、フェスにいったことないな、と気づく。それなのに丸腰で会場へきてしまって、あまりに人が多くてちょっとオロオロしながら藤井洋平氏のミラクルなステージを観たあと、DJブースへとふらふら歩いていたら、しょうたさんを見つけたので声をかける。こんなに人多くて知っている人なんて見つけられないやいと思っていた矢先だったので、知り合いを見つけて一気に安心する。

岡村ちゃんのライブ開始5分前くらいだろうか、会場は階段や2階席まで人でいっぱい、フロアではお客さんの熱気が湯気になって、巨大なミラーボールへむかってたちのぼっていた。
照明が落ちて、雷鳴がとどろく。1曲目『できるだけ純情でいたい』がはじまる。岡村ちゃん登場と同時にものすごい歓声。おお。
「Trafficベイべ、行くよ」。そこからはもうとにかく新旧の名曲たちが乱れ飛ぶ最高のステージ。
『カルアミルク』、イントロがはじまった瞬間に「オオ~」、1番が終わったら拍手喝采。白石さんタイムをはさんで(白石さんタイムあるのうれしかった)、『愛はおしゃれじゃない』のイントロ、ギターが鳴った瞬間に大歓声で、ほんとうにうれしい。まぎれもないキラーチューン。CDではBase Ball Bear小出祐介氏がつやつやの声で歌っている「マスカラつけたなら僕も」のところ、岡村ちゃんがこちゃこちゃとマスカラつけるフリをしながら歌うのが本当にすきだ。
それからキレキレのステップとターンで『ビバナミダ』、ギターをかきならして『あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう』とたたみかけ、泣く子もだまる『だいすき』、岡村ちゃん「君が!」お客さん「だいすっき!」の大合唱。全員汗だくである。

岡村ちゃんのステージが終わるとみな口々に「やばかった」「すごかった」と興奮気味に言いながら会場の外へでていく。完璧な岡村靖幸だった。かっこよすぎた。なにより皆が岡村ちゃんのことをだいすきなのが伝わってくる盛りあがりだったのがすごくよかった。


真打cero、ワクワクミツメまつりぶりに観た。
1曲目から『Summer Soul』、Cool down,Babyとは裏腹に、どんどん会場のボルテージは高まって、フロアには熱気が湯気になってもうもうとたちこめる。その湯気に照明が当たって、ステージは靄がかかった幻想的な光につつまれる。
「今日は長い時間、お疲れさまでした、ここから先は打ち上げで」という髙城さんの一声、それから山の日にちなんで『マウンテン・マウンテン』、『Yellow Magus』と、こちらも惜しみない名曲ばかりのステージ。『Contemporary Tokyo Cruise』で「うみなりかきけす」の大合唱、会場がひとつになる。「いかないで光よ、わたしたちはここにいます」、すこしでもこの時間が長く続いてくれたらいいのに、と思う。
そしてここからがかっこよくて、新曲をやってくれた。しかも、本編の最後と、アンコールで1曲ずつ。攻めている、かっこいい。


ライブをはしごしてくたくたになって、新宿のらんぶるでチョコレートパフェを食べるという悪行をはたらいた。生クリームが、悪魔的においしかった。
お盆休みの予定は、これでなくなってしまって、今日はテレビで、世界陸上競歩を観ていた。3人とも人がよさそうな選手で、これからはわたしももっとまじめに生きていこうとか思った。