磨硝子日記

すりがらすのブログ

シャムキャッツ 『Friends Again』ツアーファイナル@渋谷 TSUTAYA O-EASTのこと

f:id:slglssss:20171022162541j:plain小雨のふる肌寒い夕方、渋谷O-EAST。だいすきなバンド、シャムキャッツの『Friends Again』レコ発ツアーがファイナルの日をむかえた。


フロアは、この日を待ちのぞんでいたファンでいっぱい。客入れの曲がつぎつぎときりかわるたび、こころにくい選曲ににやりとする。やがて定刻になり、暗転とともにBGMがおおきくなれば、開演だ。アルバム『Friends Again』の衣装に身をつつんだメンバーがステージにあらわれる。

夏目くんのギターのじゃきっとした音色からはじまる『Funny Face』。菅原さんの奏でるフレーズがフロアのうしろまでしみわたれば、観客はみんな胸をふるわせて、4人に釘づけになる。
アルバムからもう1曲『花草』がつづいて、MC。「今日は雨のなか」とかいわないのがいい。『GIRL AT THE BUS STOP』『KISS』でシャムギャルのハートをわしづかみにしたあと、『Four O'clock Flower』『Coyote』とたたみかける。
MCで「ワンマンは『デート』だとおもってる」と夏目くんがいえば、シャムギャルのみならずシャムギャルソンまでが首ったけだ。バンビさんと菅原さんの微妙にかみあわないトークだって愛せるよ。


この日は『Friends Again』の曲を中心に、新旧の名曲をおりまぜたセットリスト。
なんといってもかっこよかったのは、『AFTER HOURS』や『LAY DOWN』、(ダブルアンコールで急きょ披露してくれたけれど)『MODELS』といった、いままでほぼかならずセットリストに入っていたような曲をあえて選ばず、さらりと最新アルバムの曲を全曲組みこんでいたことではなかろうか。

それどころか、最新曲といままでの曲はよどみなくなめらかにつながり、『GIRL AT THE BUS STOP』は一本の太い筋がとおったしなやかな大名曲へと変貌、『マイガール』はイントロでつつみこむようなやさしさ、アウトロはつよく抱きしめてはなさないたくましさを帯びて、アンコールへきての『渚』は2017年の観客の胸を完全にさらっていった。
夏目くんの声は、あまくドリーミーできゅんとする、鉛筆でやわらかく描いた線のようなタッチをのこしつつ、『Travel Agency』のように歌がよく聴こえる曲になれば、マッキーの太いほうで描いたゴシック体のような、はっきりとした輪郭になる。
菅原さんの歌はステージの色をかえる、『Four O'clock Flower』の歌詞をつぶさに聴いて、涙がこぼれそうになる、もっと菅原さんの声やことばを聴きたい。

このすばらしいセットリスト、曲や歌声の進化ともいうべき姿は、『AFTER HOURS』『TAKE CARE』以前/『マイガール』『君の町にも雨はふるのかい?』の過渡期ともいえるような時期/『Friends Again』という局面が、けっして断絶されたものではなくて、シャムキャッツというバンドがひとつづきに歩んできた道のりであることを、ほこらしげにあらわしているのだった。『洗濯物をとりこまなくちゃ』『SWEET DREAMS』『WINDLESS DAY』ときて『October Scarf』、『手紙の続き』『真冬のサーフライダー』『マイガール』からの『Lemon』『Riviera』、そこからつづく『台北』『Travel Agency』『Hope』。シャムキャッツのこれまでのすべてが、みごとに、ツアーファイナルのセットリストへと帰結した。


アルバム発売から4か月。あの日も雨だった。出張先から帰る足でココ吉へいってアルバムを買った。シャムキャッツのお店まわりがおわったあとだったので、矢島さんが「シャムキャッツがいないのにわざわざごめんね」というようなことをいってくれたのをおぼえている。

アルバムはiPhoneにいれて、いろんなところで何度もくりかえし聴いた。
じめじめとした梅雨の日にはひときわにさっぱりと削ぎおとされた音が心地よかった。夏には、ぬけるような青空の下で『Travel Agency』のぐんぐん前にすすむビートを感じるのが爽快だったし、べたべたに汗をかく湿度の高い日本の夏には、おなじく湿気のおおい台湾のことをうたった『台北』を聴くのがすきだった。すずしい風がふいて、心がかたむくような日には『Funny Face』を聴きながらゆきばのない気持ちをなぐさめた。満員電車に乗れば『Coyote』で「いつも通りやるだけ」と言いきかせ、くたくたに疲れた帰りには『Four O'clock Flower』がしみた。

仕事につかれると音楽をたのしめなくなってきて、だんだんと聴ける曲がかぎられてくることもあった。けれども、シャムキャッツの曲は、ことに『Friends Again』の曲は、いつでも日常に寄りそってくれた。がんばれともふんばれともいわずに、うつくしい景色も、未練も、迷いも、ただありのままを見つめてすくいとってくれて、そばにいてくれるだけで、どれだけつよくなれたかわからない。同じアルバムを聴いているはずなのに、元気なときにはますます元気がでたし、つらいときには毛布のようにあたためてくれる、そういうふしぎな力がある。インタビューのなかで夏目くんが『鏡みたいなアルバム』といっていたのを読んで、はっとするほどに腑におちた。このアルバムは、聴く人のこころを映すのだ。
thesignmagazine.com
ライブ中、時折客席をうかがうように、するどい目線をなげかける夏目くん。ファイナルの日は結局ヒゲを剃らなかった菅原さん。トークがかみあわなくても最高に音がごりごり鳴っていてしびれさせてくれたバンビさん、コール&レスポンスを1回でやめちゃった藤村さん。EASTの広いステージで、メンバーのからだはひときわおおきくみえた。それはまるで、力を均等にわけあって立つ、4本の太くてがっしり頑丈な柱のようだった。『Coyote』で夏目くんが歌うのを聴いて確信した、もう「大丈夫」なのだ。


終演後のサイン会で、ツアーパンフレットの『Tetra Magazine』にサインをしてもらう。もちろん、ココ吉矢島さんのページに(矢島さんからのお手紙、みじかくてかっこよすぎてずるい)。
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すばらしい夜をともにしたわたしたちはいうのだ。

「ねえ シャムキャッツ、次のデートはどこへ連れていってくれるの?」


Siamese Cats/Tour "Friends Again" Final 10.21 SHIBUYA TSUTAYA O-EAST
01.Funny Face
02.花草

03.GIRL AT THE BUS STOP
04.KISS
05.Four O'clock Flower
06.Coyote

07.洗濯物をとりこまなくちゃ
08.SWEET DREAMS
09.WINDLESS DAY
10.October Scarf

11.手紙の続き
12.真冬のサーフライダー
13.マイガール
14.Lemon
15.Riviera

16.台北
17.Travel Agency
18.Hope

Encore
すてねこ

31 Blues

Double Encore
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