磨硝子日記

すりがらすのブログ

Qoo10 メガ割購入品紹介 前編(2021年9月編)

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みなさま、Qoo10メガ割でお買い物しましたか。わたしも昨年くらいからメガ割であれやこれやと買うようになりまして、おなじみの20%クーポンのおかげ(?)で、もはやメガ割以外のときにはQoo10でお買い物をしなくなってしまったのですが、メガ割の時期がくるとそのぶん、ここぞとばかりに気になるものを買いこむようになりました。

今回は久しぶりにカラーメイクアイテムもふくめ、クーポンフル使用で購入しましたので、購入品の紹介をしていきたいとおもいます。手持ちのアイテムとの色比較もやってみましたので、ご参考になれば!

rom&nd リップ3種

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上から、ジューシーラスティングティント 18 マルドピーチ、
ゼロベルベットティント 18 ペタルタッセル、
ゼロベルベットティント 19 アールグレイショール

メガ割第1弾の目玉はこちら、ロムエンのリップです。ゼロベルベットティントは、公式ショップにクーポン1枚で2本買えるものがあったので、そちらでクーポンを節約しながら買うことができました(ラッキー)。

メガ割を前に、手持ちのリップの中でも開封から時間が経っているものを中心に少し整理をしたのですが、これまで鮮やかな色のリップを好むことが多かったためか、ミュート系やソフトな印象の色を全然持っておらず、YouTubeスウォッチを見まくった末に、ロムエンでみつけたのがこちらの3色です。

3つとも2020年の秋に発売されたカラーです。ところでロムエンってシーズナルコレクションをめちゃくちゃちゃんと出してくれるので、どの色がいつ出たものなのかわからなくなって(狼狽)…

rom&nd ジューシーラスティングティント 18 マルドピーチ

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少し白みのある、彩度低めの黄みのピンクです。ピーチピンクといえばそうなのかもしれませんが、アミューズなど他のブランドでいわれるような「ピーチ」はやや彩度が高く、(白みはあっても)くすみが少なめなコーラル寄りのものが多いのに対して、こちらはパッと明るいというよりはやや落ち着いた彩度感のくすみピンクといった感じです。
個人的に、果実感の強いピーチはかわいすぎる、ぷりっと肌から浮いてしまうという感覚があったので、鮮やかではないのにくすみすぎてもいないという絶妙な彩度の色出しに感動しました。はやくも大満足。

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上から、rom&nd ジューシーラスティングティント 18 マルドピーチ、
OPERA リップティント N 102 シマリングベージュ(限定色)、
AMUSE デューティント 05 HIP JIRO(リニューアル前のもの)

白みのあるミルキーな色ですが、ご存知のとおりグロスのように伸びのよいテクスチャーで、かつこの色自体がそれほど鮮やかではないので、自分の唇の色を完全にはカバーせず、唇の色が透けるような仕上がりになります。このご時世もあり、マットリップなど唇の上にしっかりと密着する、カバー力のあるリップばかりを使っていたので、久しぶりのすけすけぷるぷるリップに胸も躍りますね。

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(上)塗布直後
(下)塗布してから15分後。やや青赤みが強くなる。
ひとつだけ留意しておくべきことがあるとすれば、塗った後にフォーミュラの内側から赤みがグビグビグビッと出てくることかな。それでもロムエンのシリーズはかなり経時の色変化が抑えられるようにできているので、画像だと青赤みが強くなっているようにみえますが、唇の上だと、白みのある色ながらそれほど塗ったときとの色の差は大きく感じないかとおもいます。淡い色でも長時間楽しめるのが嬉しかったです。

もし色変化をさらに少なくしたいという場合は、ベースにロムエンのゼロマットリップスティックのヌードカラーなどを塗ってから使うというのも良いかも!唇の水分や油分に影響されにくくなるし、唇の色も均一に整えられるので発色が良くなるとおもいます。
逆にいえば、手に出してみてすぐだと白っぽい色で血色感が足りないかも?と気になったりもするのですが、ほんの少しだけど後から赤みが出てくるので血色感はちゃんとあります。

こういうかゆいところに手が届くようなスキマカラーを細かく細かく振りわけてラインナップしているのが、ロムエンの本当にすばらしいところだなといつもおもいます。ロムエンで探せば、誰でも似合う色が、どんなときにもつけたい色がみつかる、そういうブランドを手軽に買えるのはありがたいです。

rom&nd ゼロベルベットティント 18 ペタルタッセル

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ジューシーラスティングティントのほうでめちゃくちゃ語ってしまいましたが、今回購入したすべてのアイテムの中でいっっっちばん(いちばんはひとつなのですがつい強調したくなるほどに)気にいっているのが、こちらのペタルタッセル!!!

ミュートメイクをしたい方にお・す・す・め〜〜〜〜〜!
※こういうテンションになってしまうほど気にいっている

ボトルに入っている外観よりも、手に出してみると深みのある色です。パープルみのあるくすみピンクという感じで、正直けっこうシブい見た目ではあるのですが、唇に塗ってみると、手に出したときよりも白みがふわっと目立ってきて少し明るめに発色し、パープルニュアンスを感じるミルキーピンクリップになります。
ミルキーピンクというとかなりライトかつかわいらしい色を想像されるかもしれないのですが、彩度が低めなので顔から浮きにくく、パープルみが入っていることによって、あれ、ピンクなんだけど、なんかオシャレな色・・・という印象。最近パープルの眉やマスカラが流行っているのでそれと同じ原理なのかもしれませんが、なぜか肌がぱっと明るくみえたりします。

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上から、rom&nd ゼロベルベットティント 18 ペタルタッセル、
hince ムードインハンサーマット M001 ALLURE、
rom&nd ゼロマットリップスティック 14 スイートピー
WHOMEE マットリップクレヨン C.C. コットンキャンディ(廃盤)
トレンドのミュートメイクにもぴったりハマり、しかもこれ1本でキマる(もちろん別のリップとグラデにしてもOK)というのも気にいったところです。手持ちの青みピンクのリップと比較してみましたが、どれにも似ていない深みと青みのバランスでした。ミュートカラーが苦手という方でも、ぼかしやすいテクスチャーなので好みの濃さでつけられ、顔になじませやすいんじゃないかとおもいます。オシャレピンクリップを探している方にはほんとうにおすすめ!

青みのピンクリップというと、MACとかNARSとか、Huda BeautyとかUrban Decayとかクールトーンの色出しが多いブランドによくみられますが、彩度が高かったり白みが強かったりとなかなか程よいあんばいのものをみつけるのはむずかしいなと感じるなか、このペタルタッセルは彩度が抑えめであることでウォームトーンの方でもつけやすく、それでいて青みの冴えたムードがしっかりあります。
パーソナルカラー的にいうと、わたしにとってはど真ん中の色ではないのだけれど、肌の上にこのふわふわのミルキーピンクがぽこっと浮かんでくるような仕上がりが、なんともすき。こういう色をつけたときにはどんなアイシャドウを合わせようか、どんなベースメイクにしたらもっと似合わせられるだろうか、そんなふうに考えると、メイクの幅も広がるなと感じます。最近はベースメイクをWHOMEEのピンク色のBBクリームでピンク系にすることによって、くすみ色や青み色もかなり顔映りがかわるものだなあと実感しています。

こちらのリップはマットのふわふわテクスチャーもかわいいですが、秋冬には上にキラキラのパールグロスを重ねて、ちょっとレトロなメイクもしたいなとおもったり。同じゼロベルベットティントの04 バーントハートもパープルみのある、より深いピンクカラーのようなので、こちらも使ってみたい!

rom&nd ゼロベルベットティント 19 アールグレイショール

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くすみを一滴入れたような紅葉カラー。白のローゲージニットを着たときなんかに合いそうな、イエローやブラウンのニュアンスを感じる赤です。

公式の画像をみたときにはトレンドのテラコッタカラーかなとおもっていたのですが、実際に手に出してみるとテラコッタというほど黄みや茶色みが強くなく、ほんの少しだけですが白みもある、こちらもロムエンらしい絶妙なスキマカラーでした。鮮やかすぎるオレンジやテラコッタ、赤ではないところが優しい印象を醸しだしてくれて、ビンテージ感はありつつ深くなりすぎない軽やかさもあるので、秋冬の日常づかいにはまりそうです。

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上から、rom&nd ゼロベルベットティント 19 アールグレイショール、
rom&nd ゼロマットリップスティック 16 ダズルレッド、
rom&nd ジューシーラスティングティント 07 ジュジュブ、
LUNASOL シームレスマットリップス 10 ブリック、
NAMING. ソフトマットリップスティック スモーキーブリック
ちなみに一応持ちについても書いておきますと、めちゃくちゃいいというわけではありません。ティントなので唇への着色はありますが、このふわふわのフォーミュラ自体にベタつきはないものの、唇の上にバリッと密着して動かなくなるというわけではなく、指で触るとムースのようにいつまでもすべすべとすべってしまう(だからこそ乾燥を感じにくくふわっとした質感が続くのですが)ので、食事をしたりマスクでこすれたりすると取れてしまうというのが実際のところです(特にペタルタッセルなど、それほど鮮やかでない色は、着色も弱く、かつ取れたところが目立ちやすい)。
それでも唇に触れることがなければつけた状態が長持ちしますので、KF94マスクなどリップがつきにくいマスクをするときに使う、マスクをするけど喋らない日に使う、リップを直せる日に使うなどが良いかなという感じです!

ところでコスメについている「アールグレイ」というアイテム名、良い香りがしそうですごくすきです。香水とかで取りいれるのはまだはずかしいので、ひとまず色名だけでも・・・。


hince ムードインハンサーマット M004 SOFT DEMAND

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hinceはリップシリーズがすきで、マット、シアーともに集めていてこちらで4本目。こちらのSOFT DEMANDという色は、モデルさんの着用画像だと赤みがしっかりとある深いくすみピンクだけれど、YouTubeスウォッチでは赤みのあるコーラルにもみえるといった感じで、手に出したときと唇に乗せたときの色が結構ちがっていたので、届く前からどんな色なんだろうと楽しみにしていたものです。

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外観色は赤みのあるピンクベージュのようにもみえるのですが・・・
つけてみると、良い意味で予想を裏切られるおもしろい色み。ピンクベージュやコーラルに、ローズピンクが混ざったような色で、肌なじみの良さもありながら青みもピリッと効いた、フレッシュにもエレガントにも演出できる色でした。画像だと赤茶っぽくみえますが、唇につけてみると、もう少し明るく鮮やかなコーラルローズに発色します。トレンドのデカ襟ブラウスなんかに合わせると、ビンテージ感がありつつ、かわいらしさもあって良さそう。あとは、黒やネイビーなど暗めの服を着るときでも、顔色が明るく映りそうだなとおもいます。
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上から、hince ムードインハンサーマット 04 SOFT DEMAND、
rom&nd ゼロマットリップスティック 04 ビフォア・サンセット
peripera インクエアリーベルベット 4 プリティーコーラル、
WHOMEE マットリップペンシル X.S. ピンキーベージュ
このコーラルにローズピンクが合わさったような不思議な色の秘密はなんだろうとおもっていたのですが、食事をしてリップが落ちかけたときにリップの着色が鮮やかなピンクになっていたので、おそらくアンダートーンに青みのローズカラーがしっかりと入っていて、それでコーラルの向こう側から青みが滲み出てくるような色にみえていたようです。
ちなみに、わたしの唇は少し赤みのある色をしていますが、こちらの色を塗り重ねてもモデルさんの着用画像のような深いピンクにはなりませんでした。撮影のときには何度も塗り重ねているうちにアンダートーンのローズカラーが出てきてしまったのかも。hinceの着用画像は実物に近いもの(か、やや青暗めのもの)が多いですが、こちらは肉眼でも照明や元の唇の色によって見え方が変わるのかなとおもいます。

これまで試していたhinceのリップにはなかったトリックのある色だし、他のブランドにもなかなかない色で、とても気にいっています。無難にならないコーラル、ローズリップを探している方にすごくおすすめ!

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ちなみに、hinceの手持ちの色と比較してみるとこんな感じ。
上から、ムードインハンサーマット M004 SOFT DEMAND、
ムードインハンサーマット M001 ALLURE、
ムードインハンサーマット M011 SIGNATURE ME、
ムードインハンサーシアー S001 IN THE MOMENT


Torriden ダイブインマスク(10枚組)

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韓国の化粧品クチコミアプリ「ファへ」のシートマスクランキングで、わたしがみたときには2位になっていたシートマスク(筆者は最近韓ドラにハマりすぎて韓国語を勉強しておりますが、まさかファへのランキングが読めるという副産物があるとは・・・)。

こちらは低分子ヒアルロン酸と5D複合ヒアルロン酸なるヒアルロン酸がたっぷり、それからD-パンテノールとアラントインという最近の韓国スキンケア注目の成分が配合された保湿系で、マラカイトエキス(孔雀石)配合のため澄んだパステルブルーをしているという、見た目にも癒し度の高いシートマスクであります!

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秘境の洞窟にある泉のような青!

美容液はとろみのあるぷるぷるとしたジェルっぽいテクスチャー。シートはセルロースで、肌あたりの柔らかい材質。目周りのカットが小さめで、細かいところにもシートを貼ることができました。10分程度貼っていても液だれしなくて使いやすかったです。あと美容液が多めなので、手持ちのコットンに出して、頬とか鼻横の乾燥しやすいところに重ね付けもできるヨ。

ヒアルロン酸推しの保湿系ということで、シートを外した後のしっとり感、肌の柔らかくなる感じがとても良かったです。毎日生きていると、突然顔がガサガサになったり、ピシピシになったりっていう摩訶不思議な現象が起きるじゃないですか?で、そういうときに保湿しようと化粧水を塗ると、乾燥した頬のひび割れに化粧水がジワ〜〜としみて、顔が燃えるようにヒリヒリすることってあるじゃないですか?(うなずき希望)そういうときにこのとっても優しいとろ〜りシートマスクを乗せておいたら、乾物を戻すように肌を柔らかくしてくれて、その後のスキンケアもスムーズにできるように整えてくれるんじゃないかとおもいます。
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それからこれはめちゃくちゃマニアックな話になってしまうのですが、パッケージの裏面に記載されていた全成分表をみると、個包装ということもあるのか、強い防腐剤が使われていないのもとても好感を持てました。成分をみたかぎりなので、複数種類組み合わせたときなどの効果はわからないのですが、1,2-ヘキサンジオール、ペンチレングリコールなど保湿効果もある多価アルコール系や、ヒドロキシアセトフェノン(初めてしりましたがこれも防腐効果のある保湿剤だそうです)が使われていて、パラベンなどのメジャーながら皮膚刺激が気になる防腐剤が使われていないようです。

ファへの商品ページにはファへが定めた独自の20の危険成分という項目が含まれていて、肌刺激が懸念される成分が含まれていると、それが商品ページにも記載されるようになっているので、ユーザーもその点を気をつけてみているようで、ユーザーの肌おもいなプロダクトは多いようにおもいます。
ちなみにこちらのシートマスクは、ファへ基準の危険成分ゼロになっています!

ひとつ気になるとすれば外した後の手触り。ベタつきはしないのだけれど、肌になじんだ後に指をこすりあわせると、キュキュッとすべるような、指残りのある感触があります。個人的にはこれが少し、肌に何かが乗っている感じがして好みではないのですが、逆にいうとしっかり保湿されている感にはつながるかとおもうので、肌状態によってはこの方が良い!という日もあるかもしれません。秋冬も続けて使ってみて、保湿のありがたみを感じたいですね。



(後編に続く)

ワクチン接種1回目、その後と、2回目のこと

↓1回目接種の様子はこちら
slglssss.hatenadiary.jp

このブログに書かれていることは個人の経験です。
ワクチン接種後の副反応には個人差があるかとおもいますので、あくまでもご参考程度にお読みください。


週明けに出勤すると、同じタイミングで新型コロナウイルスの1回目のワクチン接種を終えた同僚たちが、おのおのの体に起こった副反応を教えてくれた。ある人にとってはちょっとした筋肉痛程度だが出勤もできるほどだったこと、ある人にとってはだるくて仕事にならなかったこと、またわたしと同年代のある人には発熱があったこと。みな一様に、何でもないようなふりをしながらも、自分の身に起こったことをとにかく誰かに話したかったのだろう。
わたしの場合、接種翌日に腕の痛みと全身の重だるさがあったけれど、発熱はなく、解熱鎮痛剤も服用せずにすみ、一日中動画をみてすごせたくらいなので、副反応自体は(比べるものではないが)比較的軽いほうだったのかなとおもう。


わたしが1回目の接種予約をした6月の末ごろ、政府がワクチン不足により職域接種の新規申請受付を締め切るとの報道があり、運よく2回目までの予約を取れたことへの安堵と、両親よりも先にわたしの順番が回ってきてしまったことにいくばくかの後ろめたさを感じていたが、幸いそのころ自治体からの接種券が届き、ほどなくして母からワクチン接種の予約が取れたと聞いて、ひとまず胸をなでおろす。

7月初旬ごろから大規模接種会場での接種や職域接種が徐々に広まっていたようで、2回目の接種を待つあいだ、SNSで接種の報告をみかけることが増えてきた。ある人は痛みやだるさを感じ、ある人は数日間何もできず、またある人は特にこれといった副反応はなかったというあんばいである。
あくまでわたしのタイムライン上の話なので国内全体の状況とは異なるのだろうけれど、6月から7月にかけてワクチン接種のアクセルがぐっと踏まれたようにおもわれることについて、何かとあの大きなイベントに備えてのことかしらといったような邪推も正直なところ禁じ得なかったけれど、実際のところワクチンが打てるのはいつになるものだろうか?秋ごろかな?いやいや年明けくらいかね?とかなんとかいっているうちに、おもいがけずはやい時期に接種の機会を得ることができ、現場でワクチン接種の準備をすすめてくださる方には頭があがらない。心から感謝している。


さて、1回目の接種を終えたわたしは、4週間のあいだ考えていた。「問題は2回目だ」と。
日本国内に先がけて諸外国でワクチン接種がはじまったばかりのころ、YouTubeですでにワクチン接種を終えたアメリカ在住の方の動画をいくつかみたり、オンラインレッスンを受けている英会話教室の講師の方にホームタウンでのワクチン接種の様子を聞いたりしていたが、それによると、1回目は腕が痛くなったりだるさがでたり少し熱がでたりするものの、それほどつらくなかったが、2回目は副反応が強く、痛みやだるさ、発熱などの症状がしんどいという傾向がありそうであった。
わたしの場合、1回目はそれほど副反応がひどくないと感じたものの、かといってたとえば接種翌日に出勤し、ばりばりと働けるかというとむずかしく、家でのんびり、可能であれば少し横になっていたいくらいだったのだから、ああ、皆までいうな(誰もいってない)。2回目はせめて接種のあとにめまいがしませんように、いやいやそれどころか副反応なんて何にもでないかもよ?などと考えてもみたが、たくましく妄想することさえ十分にできないほどには恐れ慄いていたのだ。


2回目の接種当日、曇天。前回と同じ会場につき、地下鉄の出口から地上へ到達したところでにわか雨。子どものころの遠足や運動会はもちろんピーカン、電車に乗っているときにゲリラ豪雨に遭おうとも駅に着けばぴたりと雨は止み、普段は傘を持ち歩かなくてもほとんど雨に降られないという、雨を止める特殊能力でもあるのかというほどなのに、このときばかりはなぜかザーザー降りで、まるでわたしの気力と体力があきらかに低下していることを物語るようであった。

職域接種ということもあり、他の会社からもたくさんの人が集まってきているのだが、それにもかかわらず会場は静かで、独特の物々しい空気が張りつめている。前回はそれに気圧され、問診や接種を待つあいだに極度に緊張してしまったのがよくなかった。入口でアルコールジェルを手に揉みこみながら、今日こそはそうならないように、たとえば今夜帰ってからみるドラマ、推し、夕食、今度買いたいとおもっている化粧品のこと、推しなど、つとめてほんわかしたことを考えて待とうと心に決めた。
待合室で受付を待ちながら、目の前にあるごつい空気清浄機の青いランプをぼんやりながめていた。これならコロナウイルスも吸いこめるのだろうか、だとしたらいいな。丸くてとげの生えたぽこぽことしたウイルスが、次々と空気清浄機にすおーと吸われていくところをおもいうかべた。蒸し暑い日だったからか、喉がかわいていることに気づいたので、廊下にある自販機の水を買おうとおもったのだが、今ここでひとり立ちあがったらめちゃくちゃ目立つだろうかと考えているあいだに、ついに水は買えなかった。

幸いなことに、会場の混雑を防ぐためか、それとも接種スケジュールが変わっているのか、同じ時間帯に会場に集まってきた人の数はぐっと減っていた(他の階にも接種場所を分散するなどしていたようだった)。待ち時間が短かったために、考えてみてもどうしようもないような不安をことこと煮込みまくる時間はずいぶん少なかったようにおもう。
問診ブースでお医者様から、前回の接種後にはご体調大丈夫でしたか?と聞かれ、はい、と短く答えた。それからほとんど止まらずに接種ブースまできた。やはり前回と比べて、同じ階で同じ時間帯に接種をする人数は少なくなっているようにおもわれ、会場内の導線もかなりショートカットされていた。


接種ブースにはいると、医療スタッフの方がほがらかな笑顔で迎えてくださった。もう泣きたい。とても心ぼそい。前回と何も変わらないめそめそした不安が、足元からしみしみと体を伝ってくる。
予診票を手渡すと、医療スタッフの方はわたしの緊張を察したのか、注射や採血で具合が悪くなったことはありますか?と聞いてくださった。わたしははっとして、とっさに、前回接種してすぐにめまいが起きてしまって、と答えていた。すると、もし具合が悪くなりそうでしたら、別のお部屋(接種場所)もありますよ、そちらにしますか?と教えてくださった。なんと、そんなことまで配慮してくださるのか!

あ、いえ、大丈夫です。前回と同じで。わたしはなぜかほほえみながらそう答えていた。ちょっと!寝たまま接種してもらえるコースもあるんだよ!イキってる場合かよ!ここはありがたく受けさせてもらいなよ!
副音声のわたしが至極まっとうなアドバイスを飛ばしまくるのをふりきり、わたしの無意味な強がりで、接種は1回目と同じくブースのなかで座った姿勢でしていただくことにした。というのも、接種の前から気を遣ってくださる医療スタッフの方に出会い、何となく今日は大丈夫だとおもったからだ。加えて、注射自体はほんの一瞬で終わり、しかもほとんど痛くないものだとわかっているのがかなり救いであったのだ。では打ちますね、と声が聞こえると、ほどなくして左腕に、細い細いチクッと尖ったものを感じたが、今度こそ本当に何でもなかった。ふう、こわかった。

さあ帰ろうと荷物をもちブースをでようとすると、医療スタッフの方がすかさず、声をかけてくださった。今日はお風呂に入っても大丈夫ですが、激しい運動や飲酒は控えてくださいね、それから、と丁寧に説明をしてくださり、ひととおりお話が終わると最後に、もう立てそうですか?めまいはありませんか?とおっしゃった。この方は接種後にゆっくりお話をしながら、わたしの気分が落ち着くまでの時間を作ってくださっていたのだ。さっさと立ち去ろうとしていたわたしは、ブースのなかで、瞬間、胸をうたれた。あたたかい心づかいにふれ、胸のあたりに巻きついていた不安や恐怖の結び目がすべてほどけて、体じゅうに再び血がかようような心地になった。対面で誰かに会う機会も少ないこのごろ、はかりしれない心のうるおいを感じたできごとであった。

経過観察室の椅子に座る。前回はここに座ることができず、部屋の後ろのほうにあるパーテーションの中のベッドに寝ていたことを思いかえす。椅子に座ってすごす15分は、ベッドに寝ているよりもずっと長く、退屈に感じられた。何度も手のひらに置いたiPhoneのロック画面に視線をおとし、15分きっかり経過したところでむくっと立ちあがって帰宅した。


帰宅後、用意していた解熱鎮痛剤を服用し、まだ日も暮れていなかったがすばやく入浴と身支度をすませ、いつ副反応を感知してもすぐに横になれるようにした。はやめに薬を服用したのが功を奏したのか、接種当日は軽い腕の痛みくらいで、他にはほとんど副反応らしきものはみられず、どうかこのまま時間がすぎますようにと祈りながら眠りについた。

残念ながら、わたしの願いは届かなかった。目が覚めると体は熱く、節々が痛い。体温計ではかってみると37.4℃だった。おお発熱かとおもったが、気をとりなおしてさらに薬を追加し、朝食をもりもり食べた。
わたしの場合は、この副反応というのがとても不思議な感覚だった。額や首のあたりがほてるような熱さを感じ、背中や腰まわり、お尻にかけての大きな筋肉や関節が張るような痛みがあって、まるで数年前にインフルエンザにかかったときの症状にも似ていたけれど、ただそれ以外のところは普段どおりで、食欲もあった。風邪をひいたりインフルエンザにかかったりすれば体はまるごと調子が悪くなり、だるさの風呂桶の中にどぶんと沈むような感覚がしていたものだけれど、今回はなんだか元気な体の中のあちらこちらで何かが蠢いているような感じで、確かにこのまま出勤したりするのはむずかしそうだけれど、これは病気にかかっているわけではないのだとわかるくらいには元気であった。

熱は38℃まで上がり、平熱になるまでほぼ丸一日続いた。家にあるアイスノン、保冷剤などをかき集めて体を冷やしてもなかなか熱がすぐには下がらず、頭痛があって目を開けるのがつらかったのでドラマをみることもできず、焦りながらもとても退屈だった。薬を飲みながら細切れに眠っているうち、夜になって何かが急にかちっと切り替わるようにして、熱も痛みもなくなった。わたしの2回目接種の副反応はこれで終わりだった。


わたしはワクチンを接種するという選択をしたが、そもそもワクチンを接種すること自体への不安がまったくなかったというわけではない。ただわたしが普段どのような生活をしているかをふりかえって、同居する家族がいること、またその時にはほぼ毎日オフィスへ出勤していたことから、まずは家族や同僚、通勤電車に乗りあわせる方々、スーパーやコンビニで接する方々などに感染させないために、よくお医者様に相談のうえ、ワクチン接種をしようという考えへ着地した。
ちなみに、わたしには基礎疾患はないが、アレルギー体質なので、予期せぬ副反応がないかと懸念していた。不安を解消するために、1回目の接種の際には問診でおくすり手帳をみせ、服用している薬やアレルギー症状について伝えたところ、お医者様からはそのような症状であれば接種にあたり大きな問題はないといっていただき、それによって接種の緊張はかなりやわらいだようにおもう(実際は会場の雰囲気に勝手に飲まれたが)。


2回目の接種をする前には、これでワクチンがすめば、電車に乗って買い物くらいにはいけるものだろうかと考えていたのだが、やっと接種を終えたころ、このとおり感染者数は過去最高のペースで増えつづけ、病院や保健所の業務逼迫や、重症者数の増加、自宅療養の厳しい実態も連日報じられるようになった。それは、決してウイルスの変異だけが原因なのではない。
友人と話していても、SNSをみていてもおもうのは、外出しないことが1番の感染対策になるとはいえ、出勤しなければ仕事ができない人もいるし、対面で営業しなければならない人にとっては、そこへ来てくれるお客さんがいなければいけないのであって、「人流を抑制する」と一言にいっても、それだけをされては困る人がいるのだし、そのような困ってしまう人のことはこの期に及んでも一切考えられていないのが何よりも問題で、解決されるべきなのだとおもう。

今日の新規感染者数は○○人です。この数字の裏には、何人もの家族が、友人が、恋人が、同僚が、これから出会うかもしれない人がつながっている。最善の行動を心がけながら、さまざまな事情を想像し、そして命にかかわる問題がすみやかに解決されるべきなのだと、考えることをやめないでいたい。

ワクチン接種1回目のこと

このブログに書かれていることは個人の経験です。
ワクチン接種後の副反応には個人差があるかとおもいますので、あくまでもご参考程度にお読みください。


7月にはいり、新型コロナウイルスのワクチン接種をうけた。前の日にSAKA-SAMAの寿々木ここねさんがインスタに書いていたように、接種後はすぐに帰宅し、メイクを落とし、風呂にはいってパジャマを着るのだと意気込んで、都内の貸し会議室へむかう。職域接種だったのだけれど、誘導スタッフの方がコールする社名をざっと数えただけでもおよそ10社ぐらいから人が集まってきているのがわかった。スーツやオフィスカジュアルに身をつつんだしらない人たちがみな一様に不安そうな、少なくともたのしそうではない顔をして、ぞろぞろと廊下の壁に沿って並び、整然と歩みをすすめていくさまをみていると、これから何が起こってしまうのだろうか、想像できないようなこわいものを味わってしまうのではないかとおもう妄想がどんどんと大きくなっていった。


問診室に近づくにつれて、口の中が苦くなるような心地だった。わたしは注射が苦手だ。雷の音や強い光、テレビ番組のドッキリ、電車がホームを通過するときのファーーーーーンという音、隣で誰かが怒られているとき、世の中に耐えがたく嫌いだとおもうことがいくつかあるのだが、注射もそのひとつなのだ。子供のころから嫌だとおもっていたことはたくさんあるけれど、注射については、大人になって頭で「苦手」を判断できるようになってから余計に拒絶反応をしめすようになった。特に数年前、会社の健康診断で採血をして気分が悪くなったのをきっかけに、はっきりと「注射をするのは緊張する」とおぼえてしまい、それ以来、採血でも注射でも必ず横になった状態でやってもらうようにしている。

でも今日は、健康診断の採血や、年によって受けたり受けなかったりしているインフルエンザの予防接種ではない。たまたま転職した会社でタイミングよくもらった職域接種の機会なのだ。ワクチン供給にともなう政府の対応やそれについての発言にはまじで何がどうなってんのとおもうばかりなのだが、こうしてワクチンを打てるのは、そんな政府のもとでもたくさんの人がはやくワクチンを打てるようにと手を動かしてくださっている人たちのおかげだろう。ワクチンをいつまでに、どれくらいの人たちに打つとかいいながら、やっぱり足りないのでストップストップといってみたりする、もしかしたらそう発表するしかない事情があるのかもしれないけれど、結局はそうやって国民を混乱させHPを奪っていくような政府ではなくて、今このときも、ワクチン接種会場で接種をしつづけ、また会場の人流をととのえ、あるいは市町村にワクチンがいきわたるよう手続きをすすめる、市井の人たちに感謝している。そういう人たちのはたらきの上にわたしはここへこられた。とにかく、はやく接種を終えたい。


列はすすむ。滞りなく問診室へきた。問診ブースは1部屋に5個か6個くらいあっただろうか、前の人がでたらすぐにそこへはいるよう誘導される。わたしの前にも後ろにも列はつながっている。みな問診ブースへすっとはいり、表情をくずさずにでてくる。つよい。わたしも同じように、何食わぬ顔でブースへはいり、心配なことはありませんと伝えてでてこなければ。2列になって待機していると、前に立つ男性が振り返り、斜め後ろの同僚とおぼしき女性ににこっと笑いかける。女性もまたにっこりと笑いかえす。わたしは心ぼそくなった。

問診で、お医者様からワクチン接種の説明を受けた。お話を聞きながら、わたしの悪いくせなのだが、この方はこの説明を、1日にいったい何度しているのだろうか、ほんとうに尊敬するな、などと考えていた。優しいお話のしかたに、いくぶんか胸のあたりのつまりがゆるむような気もした。利き腕を訊かれ、一瞬固まったあと、右です、と答えると、お医者様は、では左腕に打ちますね、といって、A5の半分くらいの紙にゴシック体で大きく書かれた「左」に丸をつけた。予診票とその小さな紙をもち、わたしはおもったより普通なふりをして、問診ブースをでた。


また廊下の列の最後尾にならぶと、むこうから接種を終えた人がこちらへ歩いてくる。ある人はすずしい顔で、ある人は何か不思議なものでもみたような何ともいえない顔をしていたが、いずれにせよ痛そうでもつらそうでもない。すごい。ふたたび喉のあたりがつまるような感覚をおぼえ、唾液を飲みこもうとしてみたり、口のなかで舌が上顎につく感覚を確かめていた。緊張している。こわい。でもためらう時間はない。ほとんど止まることなく、一歩ずつ接種室へむかってすすみながら、ああ痛いのかな、筋肉注射って痛いっていうよな、でもコロナワクチンの針はまじで細くてチクッとも感じないくらいだとも聞くし、あと終わった後に副反応がでたらどうしよう、だるいってどのくらいだるいの、だから今日は帰ったらすぐにメイクを落としてお風呂だ、そしていつでも寝られるようにして、明日は土曜日だし家でネトフリみよう、ああもう順番がきてしまう、そんなふうに、今考えたところでどうにもならないけれど、注射のことを考えるよりは気がまぎれることで頭を満たした。

接種室はとても静かだ。列に並んだ人たちが整然とブースに案内されていく。ついにわたしの番がきてブースに入ると、こちらにもまた優しい医療スタッフの方が座っていた。一方のわたしは誰がどうみてもわかるほどにはがちがちに緊張していたのだが、この方に余計な迷惑をかけないようにと、つとめて明るい声で応対した。椅子に腰かけ、canaで買ったお気にいりの猫Tシャツの袖を肩までまくり、ブースの壁に目をやっていると、ほどなくしてアルコール綿のひやりとした冷たさの後に、ほんとうに細い細い尖ったものでチクッと刺された感覚があった。背中のあたりに何かがさーっと走っていくような気がした。なんだ、これなら痛くない。採血より、インフルエンザの予防接種よりも断然ましだ。安堵がじわりじわりと胸のなかに広がっていく。接種記録をつけていただいた予診票をもち、接種後に15分ほど休憩して様子をみるための待機室へむかう。


ほんの15秒ほどだっただろうか。おや、何かがおかしい。気もちがわるい。視界が左右にぐわぐわと大きく揺れる。血の気がひいて、立っているのがやっとだ。こわい。腕をだらんとさせ、持っていたトートバッグの底を少し地面につけ、前かがみになって呼吸をととのえる。あと2人、わたしの前の人がこの予診票を提出するのを待たなければ、列の真ん中でいきなり倒れるわけにはいかない。わたしはこんなときにも、なぜか冷静に、どうふるまえばよいのかを考えていた。受付の番がきて、さっと予診票を手渡した後、気分が悪いです、と声を絞りだした。受付のスタッフの方が、気分が悪いって!というと、待機室の入口に座っていた看護師の方が飛んできてくださって、わたしは腕を引かれ、パーテーションの中のベッドに寝かされた。

看護師の方が血圧を測ってくださると、70ほどしかなかったそうだ。脂汗もびっしょりかいていたらしい。後から調べてみたのだけれど、注射をした後に血の気が引いてめまいや立ちくらみに見舞われる症状には、血管迷走神経反射という名前がついているのだそうだ。わたしの体に起こったことがそれなのかどうかは正確にはわからないのだけれど、これはおそらくワクチンが体にあわなかったのではなく、極度の緊張状態で注射をし、急に気がゆるんだという環境の変化の大きさに、体がついていけなかったのだろうとおもう。天井をみていると、ああもう注射は終わったのだ、全然痛くなかった、でもこんなことになってはずかしい、わたしって血圧低すぎるな、などと、水面に泡が浮かんできてははじけるように、色々な考えがでてきては、ふっと消え、また次がわきあがってくる。頭の中でしばしそんなことが繰りかえされるのをぼんやりと眺めていると、そのうちに看護師の方が声をかけてくださった。ゆっくりと上体を起こし、なぜ今日にかぎってこれを履いてきたのだとおもいながらオールスターの紐を結びなおし、パーテーションの中からでる。安心した、はずかしかった、こわかった、それぞれの気もちが胸の中の場所を取りあうようにむくむくと大きくなって、半べそをかきながら帰った。


予定どおり、帰宅してすぐに風呂をすませ、腕があがるうちに髪をドライヤーで乾かした。これで副反応がでてきても大丈夫だ、そうおもいながら夕食の準備をしていると、腕は少しずつ痛みだし、体がほんのりと熱をもちだした。脳みそと体をつなぐためにきびきびとはたらいている何かが急に機敏さを失い、少しずつ判断力がにぶくなっていくような、ぼんやりとした心地になった。腕の痛みは、かつて親知らずを抜いた後にしばらく続いた、あのひとりでに鼓動を刻む患部のどくどくと脈打つものに似ていた。

寝る前に、接種会場で気分が悪くなったことをおもいだして、やっぱりはずかしくなった。はずかしいときに優しい言葉をかけられると、ありがたいのだけれど余計にはずかしい。いい大人がこんなに痛くもなんともないワクチン接種でめまい、と事実をかみしめて、まあしかしわたしにとっては「たったこれだけのこと」がいつでもおおごとなのだとおかしい。

腕の可動域は翌朝にもっとも狭くなって、体に対して30°から45°ほどしかあげられなくなっていた。床と水平になるまであげることもできず、おもわず「手旗信号」と検索して、今どの信号ならできるだろうかと考えてみたりもした(なおやったことはない)。体は前日よりもどしんと重くなったような感覚で、今日何かに手をつけようという気にはなれないくらいにはだるかったけれど、幸いにして発熱はなく、気もちは落ちついていた。左側に寝返りを打てないので、ベッドに横たわり、自分の顔の右側にiPadを置いて、ひたすらにYouTubeやらNetflixやらで動画を見て過ごした。あと1回、今日と同じように接種をするのだということを、頭の隅の隅の方へ追いやりながら。

ほんとうにすきな化粧品2021【上半期 スキンケア、ベースメイク編】

f:id:slglssss:20210704165105j:plain「マスク時代2年目」、美容誌にもそんな言葉があらわれた。
どうせくずれてしまうというのを諦めながらも、このくらいのくずれ方なら、あるいは、こんなふうにくずれるなら、この程度しかマスクにつかないのならと、納得できる組み合わせを試しつづけ、なんとか自分のなかのベストルーティンをみつけられたのが2021年の上半期だったようにおもう。

誰にみせるためでもなく化粧をする、これはわたしの美容へのかわらぬ信念なのだけれど、それはこの1年で文字どおり、化粧をすることがわたしのためであり、そのことが心のよりどころであるということを表す確固たる言葉になった。こんなにお化粧を楽しめない日々にあってもなお、お化粧品が私の心にうるおいを与えてくれる心づよいものだったのだ。

マスクにつきにくい、マスク肌荒れに、という言葉の引力に導かれて出会った新しいアイテムや、胸のつかえを流してくれるような心地よさをもとめて行きついたアイテムなど。自他ともに認めるコスメオタクであるわたしがほんとうにすきな「マイベストコスメ2021【上半期 スキンケア、ベースメイク編】」です。

選定基準

  • 毎日使っていたもの
  • なくなったら買いたさないと困るもの
  • 使っていていい気もちになり、心がみたされるもの


×こういうのは対象外にしました

  • 毎日使うけどイエーイ!というほどではないもの
  • 仕上がりはすきだけどイマイチ自分の気もちにフィットしないもの

マイベストコスメ2021【上半期 スキンケア、ベースメイク編】

落とすよりも守る洗顔

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  • WHOMEE アミノフェイスウォッシュ(使い切ったため画像なし)
  • LUNASOL スムージングジェルウォッシュ

マスクのこすれや蒸れでどうしても毛穴のザラつきが気になっていたこの1年。在宅仕事が続くととたんに肌がなめらかになるのを感じ、これはマスクでザラついていたんだと気づいてからは、スクラブやよく落ちる洗顔、ふきとり化粧水などを試してみていたけれど、逆に毛穴のまわりが乾燥しすぎるのか、ザラつきがなくなるどころか毛穴の目立ちはひどくなっていくばかり。

そこでおもいきって、毛穴のことをいったん忘れて、肌のうるおいを守ることだけを考えてスキンケアを変えた。
洗顔酵素やクレイの入ったものではなく、アミノ酸系のWHOMEEをよく泡立てて、こすらず押し洗いに。やさしい泡立ちと、しっとりするのにヌルつきのない洗い上がり。
毛穴汚れが気になったときには、週に1回程度LUNASOLの毛穴汚れを溶かして落とすジェル洗顔を。あくまでもすべての汚れを一度に落とそうとせず、あせらず気になるところだけ落とすイメージで使う。

1ヶ月ほどつづけてみると、毛穴がふっくらとし、汚れもつまらず落ちやすくなっているように感じた。
クレンジングや洗顔料のキャッチコピーでよく使われる「落としすぎず、うるおいを守って洗う」という言葉は、肌を疲れさせずすこやかに育てる近道なのだと身をもってしるできごとで、これからのアイテム選びの指針をかえてくれた経験だったとおもう。

ゆらいでもやさしいスキンケア

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  • 女工場 ビフィダバイームアンプルトナー
  • 女工場 ビフィダバイオームコンプレックスアンプル
  • アルジェラン モイストクリアローション
  • アルジェラン モイストクリアスキンミルク

マスク生活でどうにもできずくやしいことといえば、予兆なくできる吹き出物。毎日せっせとケアしているのに、とひとりごちていると、まあそんなこともあるさと慰めてくれるような、どんな時も心に寄り添うアイテムたち。

女工場は2020年から使いつづけているアイテム。
アンプルのほうは韓国コスメ特有のとろみのあるテクスチャーで、しっとりとした使い心地が安心感をよぶ。香りや清涼感などはなく目立ったときめき感はないものの、肌の常在菌を整えるような成分が配合されているからか、いわれてみれば肌が大崩れしない、もしかしてこれに助けてもらっていたのかも、とふと気づくような、いなくなって初めて気づく系の大切な存在になっている。

トナーは対照的にとてもサラッとしていてほとんどとろみはなく、コットンにひたひたに出してパックするのに向いている。こちらも香りはなく、はっきりいって地味なのかもしれないけれど、これをコットンにひたして顔に貼りつけている間、なんとも気もちがほぐれるのだ。刺激もなく香りもなくいつも変わらないというのがよいのかもしれない。この後に化粧水をつけてもいいし、美容液にすすんでもいい、たっぷり400ml入りで、デイリー使いにぴったりのアイテム。

アルジェランは、パブリックオーガニックでしられるカラーズから発売されている、マツモトキヨシ専売ブランド。コスモスオーガニック認証を取得した高品質なアイテムをドラッグストア価格で提供しているという心意気あるブランドなので、個人的に応援している(シャンプーはパブリックオーガニックを何年も愛用)。こちらは美容誌のベストコスメも受賞している化粧水と乳液で、どちらもコスモスオーガニック認証を取得している。

化粧水はゆるいとろみがあり、手でつけるのがお気に入り。手のぬくもりを感じながら肌にのせるとすっとなじむ。深呼吸したくなるような、ダマスクバラ、オレンジ、ゼラニウムなどをブレンドした精油の香り。人によってはかなり香りが強く感じられるかもしれないけれど、個人的には目の覚めるような香りで、もやもやしている時ややる気のでない時に深く吸いこむと、気もちの整理がつく。

乳液はさらりとしたミルクで、ヌルヌルせずなじみがよいのが特徴。オーガニック系の乳液だと、使用できる成分や配合量に制限があるためか、肌に伸ばすと白く残る乳液やクリームというのがあるのだけれど、こちらは肌に残らずすぐになじむのも好印象で、乳液にいまだ苦手意識があっても使いやすかった。原料のにおいがやや残っているけれど、それも風情だとおもって。量を調整しやすく手が汚れにくいので、ポンプ式の乳液はもっと広まってほしいです。

心まで軽やかに守り彩るベースメイク

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  • SHISEIDO シンクロスキンソフトブラーリングプライマー
  • ALLIE カラーチューニングUV AP
  • WHOMEE モイストBBクリーム ペールピンク

去年まで、マスクをする時にはホワイトのトーンアップUVを塗るというのが定番だったのだけれど、今年はついにBBクリームを塗るようになったというのが大転換。トーンアップUVのみだとライトな仕上がりになるものの、どうしてもくずれた時に素肌がでてきてくすみや毛穴が目立つのと、これはなんとなく仮説なのだけれど、日焼け止めだけではなくファンデーションやBBクリームを塗っておいたほうが、マスクのこすれから肌を守り、摩擦を軽減できるような気が。

というわけで本当に毎日使っていた3アイテム。
まずSHISEIDOの下地を目の下の三角ゾーンと、鼻、額、口まわりとあごに塗る。こちらは毛穴やきめをなめらかにする下地なのだけれど、よくある硬めのシリコンっぽいテクスチャーではなく、美容液のような水っぽいユニークなテクスチャーで、薄くムラなく伸ばしやすいのがよかった。少しおくと肌表面はさらっとしながらも内側はうるおっているというような状態になり、今っぽい毛穴下地だということがわかる。毛穴やきめを埋めすぎない感じもあるので、例えるならば塗るエアリズム?汗や皮脂を吸着しながら余計な蒸れは逃してくれるような下地なのだ。

それに重ねるのはALLIEのカラーチューニングUVのアプリコットカラー。以前ラロッシュポゼのローズカラーを何本かリピートしていたのだけれど、それよりも崩れにくくしっかりとしたカラー効果がほしいならこちら。
アプリコットカラーはトーンアップしながらも白っぽく浮きにくく、湯上がりのような巡りのよさを感じさせてくれる(10年以上前だっただろうか、IKKOさんがテレビで「湯上がりの肌は血色感があっていちばんきれいに見える」とおっしゃっていたのを今も心に留めている)。
パール粒2つ分くらいを両手の人差し指、中指、薬指に伸ばしてスタンプ塗り。さらに重ねたい目の下の三角ゾーン、額、口まわりに塗る。マスクでも落ちにくいフリクションプルーフ機能でヨレにくく、皮脂テカリ防止の効果もあるので、ベースメイクがドロっとくずれてくることがない。摩擦に強い処方のためかフィックスすると動かないので、手早くパーツごとに塗るのがコツ。

最後にWHOMEEのピンクのBBクリーム。こういうアイテムや、カラーのついた下地を塗るにつけて、美容の新しい常識として、もう肌と同じ色に合わせたベースメイクアイテムを乗せなくてもよく、肌の個性+アイテムの質感や色の効果で美しくみせるという結論に至ったのだなとしみじみおもう。塗るエリアは目の下の三角ゾーン、鼻、額、口まわりと顎。指でスタンプ塗りした後、軽くスポンジで押さえると全体がなじみやすい。
BBクリームというとなんとなくお手軽感をイメージするけれど、こちらはお手軽感以上に、くずれにくく、なじみやすく、色みが唯一無二。あれこれ塗りたくないマスクメイクという制限のなかでも、肌をやわらかく、気もちまで明るく持ちあげてくれる。

このあとNARSのライトリフレクティングセッティングパウダーをフェイスライン、鼻、額、眉、まぶたにかぶせて終了。
どのアイテムもマスクにつきにくく、色みも淡いのでマスクについても目立ちにくい。マスクをはずしても(自分が)がっかりしないベースメイクの完成なのだ。


(メイクアップ編に続く)

ほんとうにすきな化粧品2020【スキンケア編】

↓メイクアップ編はこちら
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選定基準

  • 毎日使っていたもの
  • なくなったら買いたさないと困るもの
  • 使っていていい気もちになり、心がみたされるもの

ほんとうにすきな化粧品2020【スキンケア編】

憶えている洗浄剤

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  • カバーマーク トリートメントクレンジングミルク
  • BEIGIC コレクティングエクスフォリエイター
  • BEIGIC ボリューマイジングシャンプーイングスクラブ
  • BEIGIC DR トリートメントマスク

クレンジングやシャンプーといった「洗いもの」こそ、あまりこだわりのないジャンルだった。なまじ成分が読めると裏面を見て選んだりもするけれど、洗いものに限っては、それよりも「落ちる」とかそういうところの方が頭にあったんじゃないだろうか。それはいうまでもなく、洗い流してしまえばなくなってしまうものだとおもっていたから。

それが、肌に触れ、うるおいを与える心地よさや安らぎをしってからというもの、それとひと続きのところにある「洗い流す」ということに、これまであまりおもいをいたしていなかったのではと気づいた。

考えてみれば、体の汚れを落とすことは感染症などから生命を守るためにも必須であるし、特に肌や髪についていえば正常なターンオーバーを促進するために大切なこと。
今きちんと洗うことは、その場にある汚れを落とすだけでなく、その次の瞬間の体を守り、まだ見ぬその先の体が体たりえるために整えることなのだ。洗い流せば忘れ去られるものではなく、必ず憶えられているはずなのだ。

メイクやほこり、汚れを落とすだけでなく、肌にふくふくとした柔らかさを与えてくれるのはカバーマークのクレンジングミルク。
BEIGICのシャンプーとトリートメントは、ユーカリゼラニウム精油が香り、もはや洗いながら深く息を吸いこみたくなるよう。汗をかいた日には、頭皮をもみほぐすようにスクラブ入りのシャンプーで洗うと爽快。
マスクをつけているせいでごわごわとしやすい肌には、同じくBEIGICのコーヒースクラブで、角質ケアとうるおいケアを。つい手に取りたくなるコーヒーの香りも良き。


やさしさが強さになる保湿

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  • One Thing ドクダミエキス
  • Good Molecules Niacinamide Brightening Toner
  • WHOMEE モイストエイジングケアクリーム

不安でやりきれないニュースが耳に入ってきた時、誰とも会わずにじっと部屋の中にいる時、気もちがゆらぎ、ざわざわと落ちつかない時には、自分の肌にふれるようにしている。ヨガのレッスンで、左右の腕を体の前で交差させてそれぞれ反対側の肩に手を当て、自分の体を抱きしめるポーズというのをしたことがあるのだけれど、自分以外の誰かではなく、わたしがわたしで肩を抱くことができるという新鮮な驚きと、はっとするほどの安心感があった。

スキンケアをすることは、そんなふうに、自分で自分を抱きしめるのに似ている。きっといつでもできるけれど、しなくたって大丈夫な日もあるけれど、今日も今日とて大変なのだから、わたしをわたしで慰めるのだ。

今年はこれまでで一番、たくさんの保湿剤を使った。みずみずしさ、とろみ、香り、清涼感、どれにも違う良さがあって、その日手に取るものは鏡のように、わたしの心の機微をうつしだしていたとおもう。

おもいがけずできた吹き出物には、One Thingのドクダミエキスをたっぷり浸したコットンをあてる。土くさい薬草の香りを吸いこんで、頭の火照りまで冷ましてみる。
洗顔後にはGood Moleculesのナイアシンアミド配合の化粧水。とろみのある手触りが心地よく、しかも肌がぎゅっとハリをたたえてくるような感じがする。
WHOMEEのエイジングケアクリームは肌の栄養剤の気もちでたっぷり塗る。

どれもしっかり効果感を感じさせてくれるけれど、やさしい使い心地で頼もしい。スキンケアの最後に鏡を見ると、少し顔色が良くなった自分が映っている。よかった、今日もここまでこられた。そんな気もちになるのだ。



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ほんとうにすきな化粧品2020【メイクアップ編】

わたしにとって「化粧をする」とはなんであるのかを、ほとんど片時もわすれずに考えつづけた1年であった。あるときは新宿伊勢丹の発光する化粧品売場で、あるときはファンシーグッズがひしめくプラザのコスメコーナーで、またあるときはiPadからのぞく海のむこうのECサイトの上で、おもうままに色を、輝きを、うるおいをもとめて歩きまわっては、心地よいものを身の回りに集めるということを、絶えずしていた。変わってしまう日常に背骨を曲げられるようなおもいをしながら、どうにかもとの呼吸をとりもどし、自分で機嫌のとれない自分を慰めようとしていたのかもしれない。

朝、きれいに仕上げた化粧を、自分にさえ見せることなく覆い、再びそれを目にするころには崩れさせてしまうということを何度も繰り返す日々にあって、それでもなお化粧をすること自体をすべてやめてしまおうとおもわなかったのは、誰に見せるためでもなく化粧をする、ということが、わたしの心のよりどころであるというほかにない。肌を、髪を、見た目の上で華やかに、つやつやと、整えてみせてくれるだけでなく、そのきらめきは胸の中にも宿り、うるおいは心のひだのひとつひとつの間にも浸みて、身につける時には胸をはずませ、あるいは洗い流した後にまた愛着をはぐくむようなものであったのだ。

自他ともに認めるコスメオタクであるわたしがほんとうにすきな「マイベストコスメ2020」、心地よさをもとめた1年の記録を紹介します。

選定基準

  • 毎日使っていたもの
  • なくなったら買いたさないと困るもの
  • 使っていていい気もちになり、心がみたされるもの

ほんとうにすきな化粧品2020【メイクアップ編】

勇気を引きよせる口紅

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  • NAMING. ソフトマットリップスティック ミーニングレス
  • NAMING. ソフトマットリップスティック スモーキーブリック
  • rom&nd ゼロマットリップスティック #16 ダズルレッド
  • rom&nd ゼロマットリップスティック #14 スイートピー
  • hince ムードエンハンサーマット シグネチャーミー
  • WHOMEE マットリップクレヨン コットンキャンディ
  • Maybelline スーパーステイマットインク #150 サヴァン

口や唇というのは、生きていく上でとても大切な器官のひとつだとおもう。息を吸って吐く、ものを食べるという生命維持のために必要な働きをもっているし、あるいは考えや気もちを伝えたり、歌を歌ったり、微笑んだり、キスをしたりと、口や唇を使って何かを伝えることもできる。しかし、それがずっと覆われる日々が突然やってきたとしたら?

リップを塗るとマスクに付いてしまってがっかりするというのももちろん現実的なこととしては感じるけれど、わたしにとってはそれ以上に、口元がマスクで見えないということ自体が、何か大きなものが失われ、不安のもとになっているような気がしてならなかったのだ。

しかし今日もわたしたちは、マスクの内側で言葉を発し、目が合えば微笑む。キスをするのは、本当に愛する人とだけに。誰にもしられなくたって、ちゃんとそこにあるということを、ありありと感じるのではないだろうか。ならばいっそ、息を吸って吐き、ものを食べ、体に力をみなぎらせる口に、ほんの少し鮮やかな色を。

NAMING.やrom&ndは、パウダリーな仕上がりでもっともマスクにつきにくい。繊細に振りわけられたカラーバリエーションも豊富で、特にrom&ndのほうは、パッケージにあるロゴの色で中身の色を示しているという細やかさが、何とも心にくいのだ。

一方でhinceのリップは、マットでもしっとりとした塗り心地。使い心地もさることながら、キャップを開けたときの佇まいも美しく、背筋までしゃっきりとしてくる。

実用的なこともあって、ベタつきがなく薄膜でつくマットリップばかりだけれど、どれもマスクにこすれれば少しは付いてしまう。それでもいい、わたしの言葉も、声も、この色に勇気づけられてここにある。それだけで心づよい日々なのである。


整えるベースメイク

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  • NARS ライトリフレクティングセッティングパウダー(プレスト)
  • LANEIGE ネオクッション(マット)
  • rom&nd ゼロクッション
  • NAMING. プレイフルクリームブラッシュ トレラント
  • ADDICTION チークスティック #02 ノクターン
  • Visée トーンアッププライマー
  • goodal グリーンタンジェリン ビタCダークスポット トーンアップクリーム

ノーファンデメイクが卑近な現実になって久しい。マスクに付かないファンデというのもいろいろ聞いたけれど、結局「まったく付かない」というものはなく、カラー下地やトーンアップUVに助けられて、ごく薄いベースメイクに落ちついた。

goodalのトーンアップUVは、最近の日焼け止めではあまりない、仕上がりのツヤが少ないタイプ。日焼け止めの白浮きを現代版にアップデートしたような白っぽいトーンアップ効果なのだけれど、グレーっぽくならず、白すぎるわけでもなく、ベタつきやきしみ感もなく、毎朝塗るのにとても心地よかった。マスクをつける時にはこの上にviséeのパープルの下地、家にいる時にはLANEIGEかrom&ndのクッションを塗リ、NARSのライトリフレクティングセッティングパウダーをブラシでかぶせる。

クッションファンデは今年になってはじめて、きちんと使いこなせたという実感があるのだけれど、もはや付属のパフを使わず、指で塗るというのが、指先の感覚を頼りにムラなく塗れるという結論にいたった。
LANEIGEはマットタイプの中でもややうるおいがあるように見えるタイプ、rom&ndはもっとマットでフォギーに見えるタイプで、わたしはどちらかというとrom&ndの方が好みなのだけれど、指塗りのかぎりでは、厚塗り感みたいな概念が吹き飛ばされるくらいに自然。そして信じられないくらいに崩れにくい。

チークはADDICTIONのブラウンと、NAMING.のベージュ。NAMING.のほう、外観は元気なコーラルピンクが出そうかとおもいきや、塗ってみると意外と彩度が低い。どちらも、アイメイクとリップの間に入って「わたしはベースメイクです」と謙虚な姿勢なのだけれど、あっぱれ縁の下の力持ち。

化粧が崩れることを前提に化粧をする、というちょっとわけわからない矛盾のなかでは、ノーメイクから、色をのせてもOKな程度に肌を清潔にし、これはよそ行きなのですという肌に整えるくらいがちょうどいいなとおもう。なおrom&ndのネオンムーンコレクションのファンシーなかわいさはドツボです。


盛るアイブロウ

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  • WHOMEE アイブロウパウダー Bオレンジブラウン ※ディズニーストア限定
  • WHOMEE アイブロウパウダー Nブライトブラウン
  • CLIO キルブロー オートハードブローペンシル #1 ナチュラルブラウン

ただ毛の足りないところに描き足す、補うためのものではなく、色や質感を足してみるというのがアイブロウの好みであった気がする。

まず、これだけは毎日使っていたんではとおもう、CLIOのペンシル。パウダーを使う前の下地作りとして欠かせなかった。なぎなた型の芯がとにかく描きやすく、形はもちろんのこと、しっかりと輪郭を取れるくらいに柔らかいのがよい。
日本の多くのアイブロウペンシルは、不自然な描きました感が出ないよう、あえて芯を固くし、筆跡が残らずふんわり描けるようにしているものもあるけれど、わたしのように左右のバランスを整えたい時や、パウダーを載せる前の下地作りをしたい時には、このしっかり描けるタイプが向いているとおもう。韓国のYoutuberのメイクチュートリアルを見ていると、クッションファンデでベースを作った後にパウダーを使わない人も多いけれど、そういう時にもこのCLIOのような、すべらずしっかり描けるアイブロウペンシルがいいんだろうな。

そしてパウダーに使うのはもちろんWHOMEE。Nブライトブラウンはここ最近で一番の底見えアイテム。中央の彩度の低いピンクが何とも絶妙で、毛の黒さを和らげ、後からのせる黄みのブラウンを受け入れやすく、さらになぜか眉に赤みを足すことで顔色をよく見せてくれる。ディズニーストア限定のBオレンジブラウンは、パール入りのオレンジを最初か最後にふわっとのせることで、フィルターをかけるように輪郭をソフトにしてくれる。

最後に、その日使ったマスカラを眉にものせて、毛のボリュームと統一感を出して完成。眉、まだまだ盛れる。


ご自愛するアイメイク

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  • BABYMEE ニュアンスカラーマスカラ ボルドーブラウン
  • WHOMEE ロング&カールマスカラ モーブパープル
  • dasique シャドウパレット #04 パステルドリーム
  • WHOMEE マルチペンシルアイライナー シェルピンク ※ディズニーストア限定
  • COLOURPOP BFF Crème Gel Liner Get Paid
  • excel アイプランナー R05 シナモンフィグ
  • マジョリカ マジョルカ シャドーカスタマイズ(フローティング)BR701 花言葉
  • BABYMEE ニュアンスカラーシャドウ コーラルピンク

マスクから出ているとはいえ、アイメイクの細かな変化は、自分以外の人に気づかれにくいところではないだろうか。わあとときめくような輝き、目に生気が宿るようなつや、ハズシでちょんとのせた色み、それらはこの3.5cm×2cmたらずのスペースに表現され、顔を近くで見られることもなければ、わたしには撮影した写真をアプリで加工する腕もないので、すんと座っていれば、誰にも違いを気づかれることはなく、わたしの感じる気もちよさを分かちあうこともないだろう。それでも、わたしだけがわかっている、イケていると肯定し、身につけたいものを身につけていることが、喜ばしいことなのではとおもうようになった。

dasiqueのゆめかわいい9色パレット、マジョリカマジョルカのほろほろとほどけるグリッター、まぶたをふっくらと見せるexcelやWHOMEEのシングルシャドウ、下まぶたに入れるとジュルっとしたつやがかわいいWHOMEEとColourpopのペンシル。塗ると黒か茶色に見えるのだろうけど、実はボルドーや紫のマスカラ。この色を、きらめきを纏えるということが嬉しい。鏡に映る自分をみて、よし!とおもう。アイメイクはそういうご自愛のようなものだとおもうのだ。


(スキンケア編に続く)
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リ・ファンデ「HIRAMEKI」のこと

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リ・ファンデとの出会いは、2年半前の4月。愛知県安城市のバー「カゼノイチ」で、ドリーミー刑事が主催するライブへ足を運んだときである。今おもえば誰が引きよせたのだろうかとおもうような嵐の夜であった。

共演はアルバム『2兆円』を引っさげてやってきた東郷清丸。その隣でやや控えめに、しかしくっきりとした存在感をはなち、透きとおるような肌と、まっすぐな瞳が印象的だった。その夜、彼が主宰していたバンド「Lee & Small Mountains」の1stアルバムを買うと、サインをしながら「お名前何にしましょう?」と聞かれたので、とっさに赤いスウェットの青年の助言に従い下の名前を書いてもらったという、面映い場面がよみがえる。

この日をきっかけに、東京へ戻ったあとリさんのライブへいくようになり交流を続けるうち、このたび発表された『HIRAMEKI』で、とても微力ながらPRに参加させていただくことになった。
アルバムについて、またリ・ファンデが何者なのかもよくわかるエピソードは、腕利きインタビュアー ドリーミー刑事の語りのもとCINRAで公開されているのでそちらをお読みいただき、わたしのほうでは、表情豊かな8遍の物語のうち、2つについて、この春の記憶とともに味わった想いを書いてみたいとおもう。



リ・ファンデ - おかしなふたり feat.Haruko Madachi (Music Video)

The Wisely Brothers 真舘晴子をゲストボーカルに迎えた「おかしなふたり」。MVはやわらかな日差しを受けた透明感のある手触りの映像に、散りばめられた示唆もうつくしい。街が息をひそめても、重力と時の流れは途切れることなくそこにあるのだ。花瓶に挿された花、回る籠、碁盤の上を跳ねる白と黒の碁石、そして鏡に映るふたり。みずみずしく血の通った計らいに、体の真ん中のあたりでしぼみかけ枯れそうになっていた、誰かに会う歓び、あるいは誰かに会えないもどかしさが、一瞬にして、体温のある感情としてふたたびむくむくと大きくなった。

くわえてこの物語に示されたメッセージは、ひとりとひとりであろうとすることではないだろうか。ふたりは交わろうとしているようにもみえて、あと1歩分の距離をとる。それは想像力と自己愛を携える今日に必要だから。

君が怒ったり 泣くようなことと
僕が拳に 力をこめることが
重なるような日々をきっと つくれるはずさ

君が静かに 寄り添うものと
僕が夜さえ 忘れてしまうことが
同じくらいの背になるまで 綺麗でいよう

水を与え続けた花はいつかしおれ、回りだした籠は動きを止めてしまう世界で、誰かの大切なものに想いをいたし、しろうとし、侵さないこと。その傍ら、自分の興味のおもむくことを守ること。

わかりあえないからこそ、目に入るものだけをとりこんでわかったつもりになったり、同じ景色をみようと誰かの足場のマークの上に自らの足を無理やりに乗せないで、ただ今いるところから、その人の立つ姿をまっすぐみてみる。そうして、白も黒もつけないで持ち続けることは、「とても楽しい」し、「寂しい」のだ。これはなんといっても、愛おしくて、おかしくて、たまらない。


Black

Black

  • リ・ファンデ
  • J-Pop
  • ¥204

もうひとつ、全篇を締めくくる「Black」についてふれてみたい。この曲は昨年の3月に下北沢のモナレコーズのライブで聴いたのが最初だった。彼が話しだしたのは夜についてのことであった。

あたりが真っ暗になって、深夜の11時くらいに、遠くのほうから音が聴こえてきたりすると、自分と同じように夜を過ごしている人がいるんだなとおもうんですよね。大意はこのような感じだったとおもう。

その時はあまり気にも留めない言葉だったのだけれど、あらためてこの歌詞を読んでみると、彼にとっての夜は、明けるのを待つものではなさそうだ。繰り返し注がれる闇のなかに身を浸して、ひととき、同じように闇に包まれる誰かのことを想っている。

わたしにとっての夜は、ひとりで、静かで、それなのに頭の中にはあれやこれやと色々なことがふと浮かんでは消えるのを繰り返し、いつの間にか大きなうねりが生まれてしまうものだ。その渦からいつか抜けだせるのはわかっているけれど、それはじっと待つことでしか叶えられない。
それはまだ遠くない、この春の日々のようでもある。だれかと否応なしに顔をあわせる煩わしさや不安から解放され、胸が凪ぐような心地のする反面、ただじっと家のなかで、買ったままになっていた本を読んだり、ふだんなら選ばないような映画を観たり、作ったことのない凝った料理をしてみたりと発散する日が続き、ひととおりやって芯から疲れてしまった。

街にはふたたび人の姿が増えている。地下鉄のホームのじめじめとしたにおいやすれちがう人の香水の匂いは、鼻腔のそばで発せられているかのように数段濃く感じられ、車内で会話をする人の声にはしらずしらずに指向してはっきりと聞きとっている。
それでも無理やりに日の目を引っ張りだしてきたような日々にあって、これが本当の夜明けであるとは、まだ信じられない。ならば、夜に浸かるあいだ、明けることだけを願わず、たとえば静かに佇む友を想いたい。みえないものさえみえてこないかと、願っているほうがいい。


リ・ファンデ『HIRAMEKI』。それは、人々がしばらく忘れていた生々しい感覚を取り戻しつつある今こそ、心のこわばりをほぐし、しなやかな体を取り戻させてくれる。誰かに会って、目をみて話したくなる。街へ出て、眺めてみたくなる。立ち止まって、また歩きだしたくなる。懐にしまっておいて、折にふれてページを開きたくなるような、心づよい物語である。