磨硝子日記

すりがらすのブログ

ココ吉でカネコアヤノ『群れたち』を買う、下北沢をあるく、ロロ『BGM』を観る

チョコモナカジャンボをぜんぶ一気にたべたらさむくなってしまったので、タオルケットにくるまりながら、昨日のできごとをおもいだそうとおもう。

土曜日。雨をぎりぎりのところでもちこたえている空をみながら、あたらしく買ったギンガムチェックのワンピースを着てでかける。柴田聡子がアルバムのジャケットで着ていたワンピースみたいな、正真正銘ギンガムチェックのワンピースがほしいとおもいつづけて、吉祥寺のパルコでみつけたものだ。駅へむかってはしる。
コンバースははやくはしれるからすきだ。吉祥寺駅の公園口からバサラの前をとおって、ココ吉までこばしりでむかう。

ときどきツイッターのタイムラインをみる。だしぬけに「完売いたしました。Thanks!」とかながれてきたらどうしようとおもいながら、つるっと画面をスライドさせては、ココ吉のツイートがながれてこないのを確認して、またずんずんとすすむ。ココ池は瞬殺だったっぽいなと思いながら、またはしる。

カネコアヤノ『群れたち』の発売日。ココ吉で買いたいとおもっていたのに、ぼんやりしているうちに事前の予約をのがして、もうお店にでているぶんを買うしかなかったところに、矢島さんが走って買いにきてとツイートしていたから、これは走るほかない。

ココ吉とカネコアヤノちゃんといえばゴールデンウイークにインストアがあったな、お客さんいっぱいで、お店中にアヤノちゃんの声とギターの音が充満してはちきれそうだったよ。最高にかっこよかった。マリメッコの前をすぎて、ヴィレッジヴァンガードハンバーガー屋さんを横目に、左へまがる。坂道をおりて、駐車場から、窓のむこうのお店のなかをのぞく。

まだある。よかった。

のこり2枚のところで、なんとかまにあった。ココ吉さまたくさん入荷してくれてありがとうございます。
一目散に棚へむかって、ぱっと手にとる。ジャケがかわいい。そして、裏ジャケもかわいい。矢島さんがブログに書いていたのこれのことか。あーアヤノちゃんここにいる。ひー。
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それからお店のなかをぐるぐるして(『恋と退屈』単行本あったよ)、7インチの壁に原田知世『彼と彼女のソネット』をみつける。んがわいい。白い肌に、透きとおるブルーのアイシャドウ、小さな口にひかれたオレンジのルージュ、やや太めのぼさっとした眉、大きなヘッドドレスと髪型が顔のちいささをわからせる、ココ吉の壁の美少女をみつけまして、矢島さんの字をよんで、しゃっと引きぬく。
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70年代とか80年代のジャケのメイク、攻めててかわいいなとおもう。『Seiko-Train』のメイクなんて、めちゃくちゃクールでかっこいいし、『OLIVE』のキャットライン(長めに描いたはねあげアイライン)とピンクのリップなんていまの女の子たちもしているんじゃなかろうか(ドレスと帽子のドットも今年っぽいし、『OLIVE』の文字のピンクと背景の緑色のあわせも最高におしゃれ!)。

SEIKO-TRAIN

SEIKO-TRAIN

OLIVE

OLIVE

ちなみにわたしはどちらかというとLPとか大きいレコードを買うことがおおいけれど、矢島さんの解説みて、いいないいなとおもって7インチ買ってみた。ココ吉へいくと無意識に矢島さんの字を探している(気がする)。愛と信頼、矢島さんの解説。


ココ吉をでて井の頭線の各駅停車へのる。途中で急行に乗り換えてむかうは、下北沢。たのしみにしていたロロ『BGM』を観るためだ。
まだまだ時間があったので、CCCの上のカレー屋さんでチキンカレー定食をたべる。たべおわるころに「サンマのフィッシュカレー」に気づいた。また今度いこう。

線路の近くをあるいていると、大学生の男の子と女の子に話しかけられる。最近のいわゆる<若者のレコード人気>についてゼミで研究しているのらしい。ココ吉の袋をもっているのをみて、話しかけたとのこと。レコードのどういうところがすきですか、とか訊かれて「うーん、さわれるところ?」とつまらないことしかいえなくて申し訳なくなる。
でも答えてみて、みんな手でさわれるものを探してるんじゃないか、とふとおもう。矢島さんが『ADAWHO』のインタビューで「うちにレコードを買いにくるお客さんはフィルムカメラを持っている率が高い」と言っていたのを思いだして、配信とかSNSの恩恵をどこかでは受けつつも、なにか実体のある、手でさわって確かめられるものがやっぱり安心する、自分にあっている、根拠になるとおもう、そういう気持ちを、レコードや紙の本をすきな人たちはもっているのかなとおもったりする。彼らの研究結果、どこかでみられたらいいのにな。

それから古書ビビビでZINEとユリイカ 特集『あたらしい短歌、ここにあります』を買い、喫茶店でアイスコーヒーとチーズケーキをたのんで、さっそくユリイカを読む。歌人 穂村弘(通称「ほむほむ」)と詩人 最果タヒの対談をよんだあと、スカート澤部渡氏の短歌をよむ。日常へのまなざし、気づきをするどくきりとる、ほんとうにすごい人だなとおもう。

喫茶店をでると、雨はまだふるのかふらないのか腹をきめかねていた。東洋百貨店で、丈の長いコートをみつけて試着する。肩幅がないのでコートを選ぶのはほんとうに慎重になるけれど、店員さんと一緒に何着かコートをはおるうちに、これがほしいな、という1着をみつけて、さんざんに悩んで買う。


それからとうとう18時30分をすぎて、雨が夜空から垂れるひとつづきの糸のようにふりだす。ザ・スズナリへ。
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ワンピースのすそをふんづけないように気をつけて階段をのぼる。あっというまに客席は埋まり、満員御礼。
そこからはもう、なんというかみずみずしくてどきどきっぱなしだった。もうもどれない日々が、いつでも誰にとってもこんなにまぶしくて、いまとなってはくるしくて切ないのはどうして?そして、最近の毎日が、ありふれた陳腐なことのくりかえしに思えるのはなぜ?でもそこはロロマジック。青春のはかなさを、ポップであかるくすがすがしい群像劇へと昇華させるとともに、日常と地続きのところにドラマがあることを教えてくれる。江本祐介の音楽、いつも聴いているけれどやっぱり最高だ。まだまだつづくツアー、応援しています。

帰り道はロロの余韻で夢見心地、ふわふわと家へ着き、さっそくカネコアヤノのレコードをめりめり開ける。ジャケのマットなさわり心地、歌詞カードの写真、盤面のラベルにまで写真が入っていて、インナースリーブの内側にビニールがしっかり貼りつけてあるという、細部にまでこだわりをつくしたのがつたわってくる、手のこんだ仕様で感激。愛の結晶とでもいうべきか。
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聴いてみると、ああいいな、と思うひびき。アヤノちゃんの声、やっぱり林さんのギターいいな。1日あるきまわったからだにぐんぐんしみこむ。
B面の『やさしい生活』、アヤノちゃんの女性と少女をいったりきたりする歌詞、すきな子のひとり暮らしの部屋を、あるいは心のなかをふとのぞくような、いけないことをしているようなきもち、でもほんとうのほんとうのことは見せてくれるのかくれないのかわからない彼女、わからないわからない、そういう妄想さえもかきたてるような、匂いたつ彼女の色気に、わたしたちはとらわれているのではなかろうか。

カネコアヤノ『やさしい生活』

連休の今日だって、いつもどおりすぎていく1日と同じ、だけれど今日のことを、いつかおもいだしたり、わすれたりするのかな。このさきのことは今日と地続きなのだから、今日をがんばろう、そういう月並みなことをおもって寝た。