磨硝子日記

すりがらすのブログ

ドリーミー刑事とリーファンデと東郷清丸に会いに愛知県安城市へいってきた話

f:id:slglssss:20180429233153j:plain2018年4月14日(土)、昼過ぎ、東京駅。おおきなリュックに次の日のぶんの着替えだけをいれて、むかうは名古屋駅である。


ずっとたのしみにしていた日がとうとうきた。
まだ春のことなんて考えられないようなさむい日に、おしらせをみてすぐに申しこんだ。待ちに待ったライブの日だ。

主催、ドリーミー刑事さん。サニーデイ・サービス、ミツメやスカートなどのブログをご存知のかたもおおいこととおもう。ライブのレポートやディスクレビューなどをブログにアップされている、汗の匂いさえするような生身の筆致で音楽や人物への煮えたぎる愛をつづる紳士である。わたしはドリーミーさんのブログのファンで、ドリーミーさんのブログを読んで聴きはじめたレコードがいくつもあるくらい、カルチャーの先輩として、とても尊敬しているのだ。

そんなドリーミーさんが、東郷清丸と、ドリーミーさん激推しリーファンデを呼んでライブを開催するとな。

これは絶対にいかなくては!



夕方から雨が降るのらしいときいていたけれど、折りたたみ傘をリュックにぽいといれてでかけた。よく晴れていたので、新幹線では平賀さちえの♪あったか〜いそばを~を聴いて、いいきもちになったわたしはすぐにねむってしまい、やおら起きてみるともう静岡をぬけていた。
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名古屋で降りるのはほとんどはじめてだ。薄暗い雲がたれこみはじめた窓の外をみやりながら、『ついのすみか』にきりかえてプラットフォームに降りた。おおきいおおきいときいていた高島屋はおおきかった。それですごい人だった。


夕方だったので、名古屋駅から5分ほどの金山駅へ。
駅前のアスナル金山のなかにあるバナナレコード金山店。そう、ドリーミーさんのブログのサブタイトルは「バナナレコードでバイトしたいサラリーマンが投げるmessage in a bottle」・・・

バナナレコードは愛知や岐阜を中心に展開している中古レコード屋さん。黄色の看板に青い字がまぶしく映える。
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金山店はオールジャンルだけどヒップホップがおおいのかなといった印象、CDがけっこうおおくて手頃な値段のものがおおかった。CDのタイトル、天面に手書きの帯がつけられていてみやすい。ひとの体温をかんじるお仕事が垣間みえキュンとする。
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運よく5年前のレコードストアデイ限定商品、ブレッド&バター『ピンク・シャドウ』とか、森は生きている『ロンド』をどちらも新品で掘りだして、目をぎらぎら光らせながら名鉄へ乗る。



会場は愛知県安城市、Book Cafe & Bar カゼノイチ。
バナナレコードで買いこんでいるうちに開場時間をすぎ、ホテルへチェックインする時間もなく、とりあえず荷物だけあずけさせてもらってカゼノイチへ。
さきほどまでなんとかこらえていたくせに、ここへきて大粒の雨。風がごうごうとうなり、横なぐりの雨で折りたたみ傘もろとも吹きとばされそうになりながらすすむ。会場へつくころには、着ていた肉厚のスウェットに雨がしみこんで、リブがだるだるにのびきるほどであった。

階段をあがりドアをあけると、はじめてお会いするのにすぐにわかった、

ドリーミー刑事だ!!!

「こんばんは、すりがらすです、、、」
ドリーミーさんのツイートをみてDMでチケットを予約してしまったわたし、「すりがらすです」ではなかろう。

ここへきてもあほあほなわたしにドリーミーさんは「あ、どうもどうも」と笑顔で話しかけてくれる。ドリーミーファミリー(響きが最高)にもお会いする。こんなにも、はじめてお会いしたような気がしない初対面なんて、なかったのだった。


濡れた傘をすみっこのほうでたたんでいたらドリーミーさんが「一番前空いてるけどどう?イヤ?」と声をかけてくださる。ふだんはあまり一番前ではみないし、こんなに濡れねずみだけどいいのだろうかとかおもったのだけど、からだのほうが先にうごいて、わたしは「エッ、アッ」といいながら案内されるままに最前列にすわった。


定刻。
ドリーミー刑事がステージにたち、ご挨拶。
ご本人は気づいているかいないか、メモをもつ手がふるえているようにみえたのは気のせいだろうか。
ちなみに「固い」「会社の挨拶か」とご友人からいじられてましたが、わたしは真摯でとてもよかったとおもいました。


先攻、東郷清丸。
このライブの告知をしったあとくらいから、清丸さんのことをぐんぐんすきになっていった。清丸さんのライブは毎回あたらしい気づきがあるから、いつみてもたのしい。だからこの日は、愛知で、ドリーミーさん主催のライブでみられてとてもうれしかった。

会場に着くやいなや、にっこり笑って「はるばるどうも〜◎」と声をかけてくれた青年は、ひとたびマイクの前に立てば、カゼノイチの真っ赤な壁よりもなお、ひときわに赤いのであった。
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この日はリズムマシンを相棒にして『2兆円』の曲を中心に披露。

『2兆円』ツアーのあいだに何度かライブをみられたわたしがこの日かんじたこと、それは、東郷清丸がめざましいはやさでたくましくなっているということであった。

まずはテンテイグループ『サンキスト』。
はじめて聴いたときと、ぜんぜんちがう。皮肉のこもったまなざしと、堕落した生活へのあきらめ、しあわせの青い鳥をもとめるこの曲、さらりと歌うのもよかったけれど、ツアーのあいだについた筋肉のおかげで、曲全体の筆圧がつよくなったように聴こえる。

そこからはもう彼のペース。
無機質にきざまれるリズムに踊らされない、むしろ、清丸がリズムの粒を導いていくのだ。彼の歌が、ギターが、リズムの真芯をとらえながら、おおきなうねりをうみだすそのさまは、「怖がらないで あなたもさあこっちへ」と手まねきをしているようにもみえて、もう逃げられないのだった。

めずらしく披露されたカバーは、スカート『静かな夜がいい』。
清丸さんの曲は「君に会いたい」っていわないから、とても新鮮だ。澤部さんの、胸をぎりぎりしめつけるようなひりひりした高音のつらなりのあとにおとずれる、いとおしさをともなった「会いたい」とはまたちがう、暗闇でゆれるろうそくの灯りのような妖しさと、ムスクのかおりをまとった、つややかであまい「会いたい」であった。

毎度おなじみ、活版印刷でつくったグッズ紹介ももはやおてのもの、「こちら2兆円メモ、2兆円札ですね」「1万円札とおなじおおきさ、厚みでつくりました」「中にですね、3枚だけぼくの顔が印刷されてますのでそこだけ注意してください」なんていえば、みんなほしくなっちゃうことうけあいなのである。

この日は5月のイベントで限定販売されるという新曲『よこがおのうた』も披露。
「♪よこ、よこ、よこから見ちゃお〜」というかわいらしい歌詞が耳にのこる、彼のやわらかさとやさしさ、そして大人としての純粋さをたたえた、ポップソング。『インサツレンジャー』しかり、彼のふり幅がおおきいことは希望である。



後攻、リーファンデ。
彼の曲をちゃんと聴くのはこれがはじめてだった。目の前で機材のセットをする彼は、背が高くて肌がしろくて頬の高いところがつるつるしていてかっこいい。

リーファンデさんのことを知ったのは、ほかでもないドリーミーさんのブログである。記事に貼りつけてあった動画をみて、なんとおしゃれで心地のよい音楽だろうとおもって、とても興味がわいていたから、はやくライブをみたいとおもっていたのだった。
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1曲めは、彼のバンド『Lee & Small Mountains』の1stアルバム『カーテン・ナイツ』から『山の中で踊りましょう』。歌詞にある「君が住む南のまちへ」を「君が住む “安城”へ!」と歌ってくれて、きゅんというか、もっと心をぎゅんとつかまれてしまった。すきだ!

この日かんじたリーファンデさんの魅力は、一瞬のうちに放出する、ものすごいエネルギーの炎のような演奏である。しかし、それは決して熱いだけではない。彼の、風を呼びこむような、みずみずしい希望をたたえた歌声や歌詞とあいまって、「爽やかさ」と「熱さ」を同時にかんじさせるのだ。

たとえば、「毎日28時間 君を想っているよ」と歌う『Sugar Baby』は、そうか1週間の日にちをふやせなくても、1日の長さを伸ばす方法だってあったのだと気づかせてくれる(そしてそうすれば1週間は8日分と4時間になる)。そうしたにごりのない感性と、彼のなかにうずまくソウルフルネスが邂逅するときの、快感にも似た化学反応を目の前にして、わたしは彼の虜になってしまった。

炎をあおりどんどんとおおきくしていくような、せききったリズム感の『Teleport City』、ぬけるような高音がきもちいい『Crush』、アルバムの最後に収録されている、日常へうつくしいまなざしを注いだ『いようよ』、ほとんどはじめて聴く曲が、どれもすきだとおもえるライブは最高だ。わたしは君に出会うために、安城へきたよ。

物販でさっそく『カーテン・ナイツ』を買ったら、リーファンデさんが「サインしましょうか?お名前なににしましょう?」と訊いてくださる。すりがらすじゃないしなあとおもっていたら、となりから赤いスウェットの青年が「〇〇ちゃんで◎」と、したの名前を指定。そのときははずかしかったけれど、歌詞カードをみるたびに面映ゆさとうれしさがじんわりとよみがえる。



終演後、アフターパーティにも参加させてもらう。
話題はわたしのブログにもおよび、くだんの東郷清丸ブログについてはドリーミーさんから「いくらスクロールしてもおわらない」「論文」というご評価をいただいた。清丸さんからもありがたい感想をいただいて、とてもうれしかった。自分の気もちが、届けたい人に届いていてよかったとおもった。
東京からひとりでやってきたのに、ドリーミーファミリー、リーファンデさん、東郷清丸さん、カゼノイチのマスター、DJの二宮さん、バナナレコードのおふたり・・・こんなにたくさんの人たちが受け容れてくれて、胸があたたかいよろこびでひたひたになった。


日付がかわるころパーティはおわり、カゼノイチをでる。ずうずうしくも、ドリーミーファミリーに駅まで送っていただき、おわかれをした。またかならず会えるとおもって、手をふった。



旅行のとき、ホテルの朝食の時間内に起きられたためしがない。宴は束の間、のこったのは生乾きの服とレコードとドリーミーさんの奥様にいただいたおかし。むくんだまぶたにラメのアイシャドウをのせながらきらきらした気もちをおもいだす。仕度をしてホテルをでる。


前日、ドリーミーさんに教えてもらったバナナレコード岡崎店へ。名鉄の窓際、「ユニコーンLOVE」と彫りつけてあって、夢のあと。
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岡崎駅、くもり。
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シビコ岡崎のなかにあるバナナレコード岡崎店。こちらもオールジャンル、クラシックが充実していておもしろい。かよいたいかんじの、すきなお店だった。小学生くらいの男の子とお父さんが一緒にレコードをさがしていてきゅんとする。f:id:slglssss:20180430153919j:plainこちらではサニーデイ・サービス『苺畑でつかまえて』、倉内太『愛なき世界』などを新品でみつける。
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レジへいくと、きのうのアフターパーティでお会いした、岡崎店店長の真木さんがいらした。ふだんはココナッツディスクへよくいくのですといったら、「ココナッツディスク、いいお店ですよね」といってくれて、なぜだかわたしがうれしかった。またきます、といってお店をでた。


昼すぎに金山 ブラジルコーヒーへ。ここは一度きてみたかったので夢がかなった。おじいちゃんおばあちゃんと若者が一緒にいる喫茶店というのはすてきだ。A定食650円。
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スウェットを押しこんだせいでぱんぱんになったリュックを背負い、買いこんだレコードを胸にかかえて名古屋駅へ。のぞみに乗っているあいだ、ツイッターやインスタで、清丸さんもリーファンデさんも東京へかえっているのをみる。だんだんと、日常の軌道へもどってしまう。舌の根にのこる記憶をもう一度たしかめる。

東京へかえってもなんだか気もちに折りあいがつけられず、ココナッツディスク吉祥寺店へいった。矢島さんにきのうのことをあれこれと話して、バナナレコードの話をしたら、数年前まで東京にもバナナレコードがあったと教えてもらった。矢島さんも学生のころバナナレコードにかよっていたとのこと。点と点が、またぴっとつながった。




旅行先でたまたまライブへいくことはあったけれど、ライブのために旅行をするのははじめてだった。

どうしてそうしようとおもったかといえば、会いたい人たちに会いたかったからだ。
いつか会えるとおもうほどに足が遠のいてしまう人に、いま会いたいとおもった。
そして、会いたかった気もちを、すきな気もちを、つたえなければならないとおもった。

まずは、ドリーミー刑事さん。ドリーミーさんのブログに出会ったのは、まだわたしがブログをはじめる前で、当時はツイッターにココ吉で買ったレコードのことをじくじくと書いていたのだけど、ああこんなふうにもっと熱をたたえたブログをひとおもいに書けるようになりたい、とおもわせてくださったのはドリーミーさんのブログであった。
ブログをはじめてからは、ありがたいことにたくさんの友だちもふえて、ブログ読んだよといってくださる方もあらわれるようになった。わたしはわたしで、自分が過去にブログに書いたことが、時をへて、自分自身をはげましてくれることがおおくなって、自分の気もちをとっておくことの大切さに気づいた。だから、ドリーミーさんにお会いしたら、ブログをはじめるきっかけをくださったことへの感謝を、つたえたかった。

それから清丸さん。彼に出会ってから、ひとりの人間というのはいろいろな面をもっていて、そのどれもがその人なのだと何度もおもいしらされた。
にこにこ笑って話してくれるのも清丸、目をみて話を真剣に聞いてくれるのも清丸、みごとなまでに秘孔を突くような演奏をやってのけるのも清丸、ドリーミーさんのお子さんと子どものようにあそぶのも清丸、オフィスで活版印刷をするのも清丸、『2兆円』ディスクBでみずからのたよりなさを抱きしめるのも清丸、すべて清丸なのだと気づくとき、人間の底しれないおもしろさにひれ伏したのであった。清丸さんには音楽の魅力もそうだけれど、人間としてのすこやかな生き方を、教えてもらっている気がする。

はじめてお会いしたリーファンデさん、彼に会う前は、とにかくはやくライブをみたいという気もちだったけれど、ライブをみたあとには、バンドの演奏をはやくみたいし、これからも彼をみつめつづけたいという気もちにかわっていった。
それと、彼と同世代であることも、わたしが彼に共感できる理由のひとつだとおもっていて、というのは、彼にもまたちらちらとみえる「やばさ」があって、うまくいいあらわせないけれど、それは同世代に通底している、あきらめ、ひらきなおり、皮肉、いわゆる「さとり」といわれてしまうようなものにも似て、こうあらねばならないというしがらみから離れて、自由にドライブしていくところが、とてもひびきあうとかんじたのだ。ともすれば「新人類」だとかいわれてしまうけれど、時代の旗手は「新人類」でこそ務まる、そのくらいの意気でよいのだと、彼は体現している気がした。


ライブにいくことが、音楽を聴きにいっているだけじゃなくなって、会いたい人に会う機会になったのはしあわせなことだ。そして、わたしがつたえたい気もち以上のものを、両手にもてないくらいたくさんたくさんもらって帰ってきた。
くりかえしていく日常を一歩踏みはずして、いつもとはちがう乗りものに乗れば、きっと目の奥はひらいて、あたらしい光が差しこんでくる。ぱんぱんのリュックとずっしりしたレコード袋は、荷物のおもさだけじゃなかったはずだ。春の嵐の夜のことを、きっとわすれない。




リーファンデさん、清丸さんご本人たちも絶賛の、ドリーミーさんのブログ、ぜひお読みください。
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