磨硝子日記

すりがらすのブログ

bjonsのこと

2月14日(金)、だいすきなバンド「bjons」の新曲が配信リリースされました。ずっと待ちつづけていた新曲は数分ずつであっというまにおわってしまったけれど、でもとてもうれしくて胸がほかほかな気もちでいっぱいになったので、うまくことばにできるかわからないけれど、ブログを書いてみようとおもいました。
えーと新曲は、とおもったけれどそのまえに、すこし(たぶんながくなるけど)bjonsをさいしょにしったときのことをおもいだしてみます。

わたしはなにでbjonsのことをしったかなとかんがえると、『SILLY POPS』の発売のときにたしか岡村詩野さんがイマラジでbjonsを紹介されていて、それを聴いていたドリーミー刑事がツイートしたのをみたのだったとおもう。そのあとなんでかのきっかけで音源をはじめて聴いたときに、あ、これはわたしのずっととってもすきな音楽、とぴんときて、ツイッターでメンバーのみなさんを一生懸命探してぽちぽちフォローした(橋本さんのアカウント、当時はプロフィールの画像が設定されてなくて、別人じゃないよね、っておもいながらフォローした。ご本人でした)。さいしょにライブでみたのは北参道のストロボカフェで、夏のおわりの雨がふっていて、すこし肌さむい日だった。北参道にはじめていったので駅の出口をまちがえて(ライブのとき時間に余裕をもってつけたためしがない、こんなにたくさんライブにいっているというのに)、会場についたら谷ぴょんさんに道間違えた?とにこにこ話しかけられたのをおぼえている。

そこでみたライブがなんともわすれられない。音源で聴いたときの、これはとってもすきな音楽だなとおもった、どきどきする気もちがにわかによみがえってきて、ストロボカフェのあたたかい照明につつまれて、こんなすてきなバンドがいて、それをいま目の前にしている、ほんときょうきてよかった、とずっとほわほわとおもっていた。ゆたかな音色と、つややかであたたかい歌声、にこにこ笑いあうネアカな雰囲気。けっして派手さはなくて、むこうからがつがつとせまるようないきおいもなくて、ラジオとか街中でふと聴いたら気になってしらべてしまう曲のように、音楽そのものがひとりでに魅力の玉のようにころがってきて、わたしはそれを興味の目をみひらいて、しかとうけとるだけなんであった。それにしてもこのギターボーカルのひと、めちゃくちゃに声とたたずまいがすきすぎる!ア~~~このギターのひとの音色もちゅちゅちゅちゅ~んてしていてテクニシャンすぎる!ぬ~~~ベースのひとの縁の下の力もち、もとい、怪力感がすごい!

そのライブには長門芳郎さんもこられていて、というか長門さんはよくbjonsとかSpoonful of Lovin'のライブにいらっしゃって、なんかふつうにそこに座っているけど、毎度おみかけするたびに、れ、レジェンド...!みたいな気もちになってしまい、達郎さんとうなぎとか食べたことありますか?みたいなどうでもいいことを逆にきいてみて普通に話しかけてもいい人だと確かめたくなってしまうのだけど(こないだパイドに加納エミリさんのレコード買いにいったときはじめて話しかけられました、かわいいおじいちゃんでした)、このときは長門さんのむちゃぶりで、bjonsはのちに大瀧詠一トリビュートアルバム『GO!GO!ARAGAIN』に収録される『雨のウェンズデイ』を演奏してくれたのだった。長門さんありがとうございます。わたしがこの曲をライブで聴けたのはこのときもふくめて3回だけです。この曲はほんとうに何度聴いても、bjonsがカバーしてくれてうれしいなとおもうばかり。さっぱりとそぎおとされたバンドアレンジと、そのなかできわだつつやつやの今泉さんの声、きらっとひかるギターやキーボードのフレーズ。インタビューで今泉さんが、この曲の歌詞のことばの区切りかたがおもしろくてそれに気をつけて歌ったというようなお話をされていたのをみたけれど、改めて聴いてみてもそういう原曲のたましいがあたらしい蝋燭の上でしずかに燃えるような歌い方、演奏に、bjonsがいる時代にこそ生まれてよかったなとおもうばかりなんである。ライブの帰りぎわにドアをあけてふりむいたときの、今泉さんがにこにこの笑顔でわたしに手をふる姿が目に焼きついている。
r-p-m.jp



それから去年のはじめのライブくらいに、だんだん新曲が披露されるようになってきた。去年はbjonsのでているライブに3回いっているけれど3回とも演奏していたのが『抱きしめられたい』だった。最初の印象は、なんかむつかしい曲で、なんか宇宙、みたいなかんじだった。容易におぼえられなさそうなコードやメロディライン、サビにきてぐわっと空間がひろがるような展開と「宇宙船の呼び声」という歌詞にかんぜんにひっぱられているが、先日リリースされてから歌詞をみたらちゃんとコンビニにいた。なんだかここからは妄想だけれど、この曲の歌詞は、毎朝おなじように乗る満員電車や、街灯に照らされた家の近くのしずかな夜道をしっている人じゃないと書けないのではないかとおもった。電車に飛びのって車窓から景色をみていると、いつもおなじようにみえて、季節のほうがかわっていくのに気づいたり、人ごみのなかでつり革をつかみながらふとみやった空がぬけるように青くて、それこそ『SILLY POPS』のジャケットみたいな色をしているなとおもったり、そういう機微をすくいあげるような物語にかんじられる。「夜明けのブルー」にはじまり、色彩や光の明暗をあざやかさに映しだすことばと、繊細かつ複雑に表情を変えるアンサンブルがあわさり、まるで万華鏡をのぞくようにつぎつぎと景色がみえてくるようである。たくさんの人影が行きかうのもみえるのだけど、その人たちは自分とははなれた存在で交わらず、いつもおおきな街の中にひとりでいるような感覚。ところで今泉さんは歌詞のなかで、いつも世界と自分とか、君と僕(僕と君ではない)の距離をはかっている気がする。「麻酔がさめたら」とか、白昼夢みたいなふわふわとした靄のかかった映像としてみえてくることもある。ライブにいっても今泉さんとは3回くらいしか話したことがなくて、ふだんコンビニでなに買うのかとか訊きたい。

『フォロー・ユー』はライブで演奏している新曲のなかでいちばんすきだなとおもっていたので、このたびリリースされてすごくうれしい。まずもってbjonsにしかできないよというかんじのタイトなリズム感のアンサンブル。そしてその整然としたリズムの上に、これまでのbjonsの曲のなかでもすこしだけ音域の高い、今泉さんの揺らぎをたたえたせつないメロディラインがのってきて、クライマックスへむかうにつれてうねりを増してくる。だんだんと楽器の音がふえてきて、音の密度がぎゅっとたかまり胸もたかなりまくったところで谷ぴょんさんのぱぱぱぱっていうフレーズで歌詞に目をおとすと「生まれかわるなら僕のことを待ってからにしてくれないか?」…なんか、現実にこういう気もちになったことないけれど、ここへつれてきてくれてありがとう、みたいな気さえした、涙腺決壊…

bjons、だいすきなのだけど、聴いていてとっても、も~ずるい!みたいな気もちになるのはわたしだけだろうか。全員ずるい。りっちゃんさんのドラムの音、すっごくすっごくすきな音で、あったかくて重さのあるパスッていう音が最高だし、谷ぴょんさんはひとことでいってなにをするにも気が利いている方ですが、今回も八面六臂のご活躍。橋本さんは『抱きしめられたい』の最初の1音でもうすばらしすぎるので割愛します。渡瀬さんは個人的にだいすきでサポートで出演されているほかのライブもちらちらといっているのだけど、ほんとによらけんさん(と呼ばせていただいていますが)のようなすばらしいギタリストがおなじ時代に生きていることがうれしくてしかたないです。今泉さんのすばらしさはちょっと語彙力がたりなくてうまく説明できないけど、秘密のミーニーズの菅野みち子さんが今回の新曲を「色気がある」、今泉さんを「声がイケメン」と形容されているので、あつかましくも同志…みたいな気もちでいる。色気って、とてもエネルギーをたたえていてとてもいいことばだな。色気。わたしも今泉さんの魅力を色気とかそういう熱量の高いことばであらわしたいけれど、あぶなっかしくてできなくて、いつも「推し」と呼びながらどきどきする気もちをくるんでは胸のそこにしまっている。

今週末にひさしぶりにbjonsのライブをみられる。今泉さんはライブの前に風邪をひいちゃうらしいので、どうかいまだけはと祈りながら、あと何回寝たら、とはやる気もちをおちつかせる日々です。