もう一度まわりはじめる
部屋を片づけ、レコードプレイヤーのピッチ調整をした。4年ほど前にはじめてレコードを聴くために買ったオーディオテクニカの10000円くらいのプレイヤーは、入門編としては操作も簡単だし音もよくて、当時のわたしにはじゅうぶんだったのだけれど、聴いているうちにピッチが高くなってしまって、再生するたびに喉元をかきむしりたくなるほどもどかしく、そのせいであまりレコードを聴かなくなってしまっていた。このプレイヤーはAmazonのレビューでもピッチが高いと書かれているので回転数が早くなってしまう仕様なのか、いっそのことプレイヤーを買い替えるのがよいのだろうかともおもったのだけど、それほど使い古してもいないので、「レコードプレイヤー オーディオテクニカ ピッチ 高い 調整」といったあんばいで、おなじ経験をもっている人はいないかとさがすと、1番上に解決法をのせたブログがでてきた。プレイヤーをひっくりかえし、回転数のところのネジをマイナスドライバーで動かせと。右か左かどちらに動かせばよいかわからなかったので、とりあえず45回転のネジを左に。ネジの上にはスポンジが貼られていて、おそらくこういうカスタムが容易にされないようになっていたのだけど、ブログによれば「ドライバーをぐっと押しこみ力をいれて回す」とのことであったので、スポンジで覆われているせいでネジ穴がよく見えないながら、ドライバーがはまる感覚を頼りに左に回す。プレイヤーを元に戻し、あれやこれやの線をつないで、ターンテーブルにベルトを巻き、プレイヤーにセットして、マットを敷いて、レコードを載せて、針を、大変だ。オートプレイであるからして組み立てをするのははじめてだったのだけど、これはなかなか大変なことをはじめてしまった。でもやるんだ、どうかネジは左回りであっていてくれ。7インチのレコードをかけて、iPhoneと聴き比べたり速さを確かめたりしながらピッチを調節した。ピアノの練習用に入れているメトロノームのアプリが役に立った。33回転の方は杏里さんの『Timely!!』にした。1時間ほどネジを探っては回し、ひっくりかえして組み立て、再生するのを繰り返すうちに、耳で聴く範囲では音程もあい、なんとか再生スピードもデジタル音源と同じくらいになったので、作業を終えた。素人の作業なのでもっといい方法があったのかもしれないけれど、これでレコードも快適に聴けるし、プレイヤーも前よりいきいきとしたような気がしたのでよかった。
これはまたレコードを聴くのがたのしくなるとおもっていたら、TwitterでSTEREO RECORDSさんが竹内まりや『ヴァラエティ』が入荷したといっているではないか。あこがれのレコードのひとつだったのだけれど、お店の面出しにあるのをみると、やっぱりパッと買えるものではないとおもって見送りつづけていた。そのうちにどんどんどんどん相場は上がり、最近では5000円をくだらないのではないだろうか。これは今ではないのか。東京でさえなかなかこんな機会もないとホームページをひらき、意を決して「カートへ入れる」ボタンを押す。ほかにはどんなのがあるだろうとページをめくるうちに、これもほしかった杏里さんの『COOOL』、あこがれの佐藤博『AWAKENING』再発盤、おなじく佐藤博『SOUND OF SCIENCE』もみつけ、注文した。きっとお店なら、きょうはやめておこうとどれかを棚にもどしていたのにちがいないけれど、通販であることもたすけて額面の重さはやわらげられ、いつになく大胆な買い物をした。ひさしぶりにこんなに買ったなとおもいつつ、だいすきなアルバムばかりがみつかってうれしかった。
まりやさんはもちろん、達郎さんや、ユーミンがだいすきだ。はじめてレコード屋さんで買ったレコードは松任谷由実『パール・ピアス』だった。なぜかわからないけれど聴いてみたいとおもうのはそういう人たちの音楽ばかりで、でもそれはわたしがひとりでに得た好みなのだとおもっていたら、ある時実家の車を買い替えたときに車内からまりやさんとユーミンのCDがでてきて、これだったのだとおもった。母にきくところによると、2歳くらいのときには言葉の意味もわからないままに『けんかをやめて』を歌っていたのらしい。まりやさんや達郎さんやユーミンの曲を聴いていると、はじめて聴くはずなのになぜか、これはしっている、とおもうことがあるのだけれど、きっと寝室や車のなかで繰り返し聴いていたのだとおもう。昨年、達郎さんのライブにいけることになったとき、母はとてもうらやましがったし、ライブがどんなだったかと興味津々で、内容を話すといっそういきたそうにしていた。それからおもいだしたようにまりやさんやユーミンの曲を聴きはじめたりもしている。ちなみに、わたしがこどものころからすきなaikoは、紅白でユーミンがでてきたらカメラも憚らず号泣していたほどのユーミンファンだから(新年会にも呼ばれているらしい)、わたしはやっぱり気づかないうちに聴いていたのだ。これも母のもっていたアルバム。